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子どもの「花」が育つとき 66

第4章 つぼみのころ  ◆1歳半ごろ~2歳半ごろ◆
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 * 夫婦円満が最高のしつけ
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思いやりのある子に育てたい
親なら誰しもが願うことです
人に対する思いやりや優しさは、子どもに理屈で教えられるものではありません
お父さんとお母さんが
互いにいたわりあい、相手を思いやる気持ちを持つ――
そんな両親の姿を見ながら、子どもはごく自然に
思いやりの心や、優しさを身につけて、素直にすくすくと育っていくものです。

お子さんをはじめ、ほかの人には優しく穏やかでも、
なぜかご主人には冷たく当たるお母さんがいますが、
これでは子どもに、人への優しさ、思いやりは育ちませんよ。

和やかで温かい家庭の雰囲気をつくるのは、
お父さんよりも、やはりお母さんのほうが上手です。
たとえば、「行ってきますと機嫌よく会社に行ったお父さんが、
帰宅したときには、ひどく不機嫌になっていることがあります。
おそらく会社で、上司から無理な仕事を押しつけられたとか、
得意先から嫌味を言われたとか、部下から反抗されたなど、
何かいやなことがあったのでしょう。

こんなときのお父さんは、
朝は活発に働いていた知的脳細胞――感情を抑えようとする脳細胞も、
すっかリエネルギー切れとなり、あたかも2歳児のように自己中心的になっています。
ですから、お母さんが「遅いじやないなどと小言で出迎えようものなら
たちまち感情的になってうるさい!と応酬してきます。

お母さんがイライラしているときでも、
お父さんの帰宅時は、気持ちのスイッチをパチリと切り替えて、
おかえりなさい。お疲れ様」と、温かく出迎えてあげてください。

そして、そのときもし、お父さんが不機嫌そうな顔をしていたら、
「ははあ、いま2歳児と同じ気持ちになっているな」と察して、
お母さんのほうが知的脳細胞をフルに働かせてみる――
同じ土俵で闘わないようにするのです。

小言を言いそうになったときも、2歳児のしつけのことを思い出して、
命令口調にならないように話すのが、知恵ある妻です。

そんなものわかりのいい妻になんてなれないわなどと、おっしゃらないで
「柔よく剛を制する」ということわざがあります。
女性のこんなちょっとした知恵が、
それこそ、男性のひとつ上を行くことになると思います。
どうか「知恵ある妻」に
そして子どもに対しては「知恵ある母」になってくださいますように

     **********
 あけましておめでとうございます。
 年の始めのお話としては、人間関係の最も基本的な関係である夫婦についてのお話であり、なおかつ夫である私としては大変ありがたいというか、嬉しいお話です。長いこと児童相談所を始めとして、子どもの相談に関わってきた者としては、お子さんの相談に見えたお母さんで、夫婦円満な生活を送っているお母さんには出会ったことがほとんどなかったと言えるでしょう。もちろん、全くなかったとは申しません。例えば障害を持ったお子さんを育てているお母さんなどの中には、ご夫婦で協力して一生懸命育てておられる円満なご夫婦もおられました。でも多くの場合は、よくお話をお聞きすると、お父さんに対する、不平や不満を口にします。恩師の野田先生も「家族の基本は、夫婦である」というのが口癖でした。相互信頼、相互尊敬、目標の一致と相互協力の大切さを言われました。
 男性の努力ももちろん必要ですが、夫の対してはどうか「知恵ある妻」に、そして子どもに対しては「知恵ある母」になっていただきたいと心からお願いいたします。
 今年もお出かけいただきますようどうかよろしくお願いいたします。

「語りかけ」育児 49

 言語発達と知的能力は密接に関係しています
                                    サリー・ウォード

 生まれたばかりのときには何もできない赤ちゃんが、生後たった4年の間に、どうやってことばを覚えるのか、それはいまだに謎のままです
 赤ちゃんが出すでたらめな音にまわりのおとなが応じると、赤ちゃんはだんだんことばを覚える、というのが言語発達に関する初期の学説でした。たとえば、「ママ」に似た音を出すたびにお母さんが来てくれると、赤ちゃんは「ママ」という音と、「お母さん」を関係づけるようになる、というのです。
 しかし1950~60年代、言語学者のチョムスキーはこの説を否定しました。彼の主張は、こどもは言語習得するための能力を生まれたときから持っており、ことばを聞くとその「言語獲得装置」が作動して、聞いたことばを意味づけしたり、文章を作ったりできるようになるというものでした
 別の高名な言語学者ピンカーは、最近の著書の中で、こどもは単語には名詞、動詞などの種類があり、それぞれ文の中で違った役割を果たすこと、そしてそれはすべての国のことばに共通するということを生まれたときから知っている、との立場を取っています。ネコのミーコが花びんを倒してしまったときにお母さんが「ミーコったら―」と言うのを聞けば、事件を起こしたのはミーコで、ミーコが文の主語であることがすぐにわかるというのです。
 言語知識がこのように生まれつき内在するのかどうか、意見がなお分かれるところです。しかし、人間の赤ちゃんが、生後、驚くべき速さでことばを覚えるわけを説明するには、赤ちゃんが何らかの知識またはメカニズムをもともと持って生まれてくると考える必要がありそうです。このことについては、学者の間でもおおむね意見が一致しています。

 ことばを覚えてゆく上で、まわりからの働きかけは、どの程度影響するでしょうか。言語発達のいくつかの重要なポイントは、たしかに環境からの影響をほとんど受けません。高度難聴のこどもも聴力正常のこどもと同じ時期に哺語を言い始めますし、初めてことばを言う(初語)時期は、その子のおかれた環境にかかわらず一定です。ただし、その先の言語発達や社会性の発達が、環境しだいで大きく変わることは間違いありません
 共同研究者のディアドリと私の臨床経験からわかったのは、こどもに対する親の接し方を望ましいものに変えると、こどもは大きく変化するということです。これが「語りかけ育児」のとても重要な部分です
 つまり、ことばを身につけるための機能を生まれつき持っているとしても、話しかけ方しだいでこどものことばの発達には大きな影響が出るのです。このことは「語りかけ育児」を体験するにつれておわかりになると思います。

こどもの理解レベルに合わせて話をする
 ことばを使ってコミュニケーションすること。これは、人間と他の生き物との大きな違いですこどもがすぐれたコミュニケーション能力を身につけられるようにおとなが気をつけてあげたいものです
 幼児期にことばが遅れている子はとても多く、7歳児では10パーセント以上です。何らかの神経系や機能面の問題から起きている場合もありますが、大半のことばの遅れは、おとなが話しかけることばと、こどもが理解できることばのレベルがうまく合っていないために起きているようです
 おとなは、自分の話しかけ方をこどもの年齢や大きさに合わせて上手に変えていくものなのですが、こどものことばの理解度が年齢よりも遅れ気味の場合、おとなの話しかけ方とこどもの理解度との間にずれが起こりやすくなります。
 こどもの理解度が遅れる理由はいろいろです。鼻の病気や中耳炎は赤ちゃんや幼児にはありふれたことですが、炎症などによって聞こえにくくなると、赤ちゃんはてきめんに聞こうとしなくなり、結果として理解が遅れることがあります。
 赤ちゃんかお母さんが長い間病気だったり、遠くヘ引っ越したりして家族の手助けが受けられないといった、生活上の避けられない事情やストレスによっても問題は起こりえます。
 ことばの遅れには、さまざまな要因がからむので、虐待とか重大な育児放棄といっためったにない深刻な場合以外には、こどものことばが遅れたのは自分のせいだ、と親が自分を責める必要はありません。

まわりからの刺激が知的な力を伸ばす
 知能は生まれつき決まっているのか、それとも生まれた後に決まるのか。これも、18世紀以来いろいろ議論されてきました。今のところ、研究者の間で一致しているのは、赤ちゃんはあらかじめ決められたプログラムどおりに自動的に進んでゆく機械とはちがう、ということです。
 妊娠12週には早くも神経細胞の協調的な動きがはじまり、それによって、脳の形態が変わってゆきます。
 新生児の脳細胞は、数だけはそろっていますが、お互いをつなぐ回路がまだできあがっていません。生まれてすぐから、赤ちゃんの感覚を通してはいってくる感覚情報(刺激)が神経を活動させ、無数の神経のつなぎ目(シナップス)をつくります
 生後3年間くらいで脳は大きな発達をとげます。この時期、脳の中の神経回路をつくりあげるためにはまわりからの適切な刺激が必要です
 2歳前後のこどもは、脳の中におとなの脳の2倍の数の神経のつなぎ目(シナップス)を持っていて、情報を伝えるためには、おとなの場合の2倍のエネルギーを使います。この時期につくられたもののあまり使われないシナップス結合は10歳を過ぎるとだんだんなくなっていってしまいます
 周囲からの刺激が不足すると、発達上の問題を引き起こすというさまざまな研究の結果に基づいて、アメリカ合衆国やイギリスでは、文化的に貧しい環境のこどもたちに、3歳児から豊かな遊びや十分な語りかけを行って豊富な刺激を与えようとする保育プログラムを行い、大きな成果をあげました。
 人は生まれたときから知的な能力に差があります。私たちみんながアインシュタインになれるわけではありません。けれども、知能指数は固定していて絶対変わらないというものでもありませんし、特に発達初期の環境しだいで大きく変化する可能性もあるのです

ことばが発達すれば、知的能力も伸びる
 こどもは、周囲のものやできごとや人について、探索したり経験したりしながらことば(言語)や知的な力を発達させてゆくのですが、知的な力と言語とは深く関係しています
 物の名前を言えるようになるには、あるものが見えなくなっても、そのものは存在しつづけるということがわかるだけの知的発達が必要です
 赤ちゃんは最初、自分のうちのネコだけを指して「ネコ」と言います。けれども他の場面でおとなが「ネコ」ということばを使うのを聞いているうちに、どんな場面にも「ネコ」は「ネコ」として一般化できるようになります。ことばによって整理してもらうことで、概念形成は大いに進むのです。
ジグソーパズルをしているこどもに、おとなが「向きを変えてごらん」とか「それは小さすぎるよ」と話しかけてあげます。ことばによって整理してもらうと、こどもはそこで学んだことをほかのときにも応用できるようになります。
 4歳半までに、こどもはすっかり言語を身につけ、おとなと同じように使いこなせるようになります。たとえば、ジグソーパズルをうまく完成させるには、ピースをどんなふうに並べたり動かしたりすればいいか、あらかじめ頭の中で言語を使って予想したりやってみたりできるようになります。実際に身体を動かしてやってみるまでもなく、問題を解決できるようになるのです。
「君が先にやっていいよ、その次が僕だ」などと事前に計画したり、話しあったりもできるようにもなります。
 知的な力は言語の発達と切り離しては考えられません。「語りかけ育児」は、その点について大きな意味を持つのです

     **********
 ウォードさんのあとがきともいえる、「言語発達と知的能力」の関係についてのお話です。私たちは、こどもが話せるようになるのは当たり前と思っていますが、こどもがことばを獲得していく過程と周囲の話しかけ方の影響の大きさに改めて感じ入っています。ことばが使えることで、人間はすぐれたコミュニケーションの能力を身につけ、現在にいたるまで文化を発展させてきました。考えてみれば、ことばが使えるということがいかにすごいことであるかがよくわかります。
 私たちの社会は、適切なコミュニケーションが行われることで、安心してくらしていけるのではないでしょうか。終わりの見えないウクライナの紛争にしても、身近な家族や友人とのトラブルにしてもコミュニケーションがうまくとれないことに起因しているとさえいえるのではないでしょうか。そのためにも、「こどもがすぐれたコミュニケーション能力を身につけられるようにおとなが気をつけろ」ことは、おとなの責務とさえ言えるでしょう。さらにまた、こどもの知的な力を伸ばすために、ことばの発達は欠かせません。ウォードさんの提唱する「語りかけ育児」の果たす役割は、きわめて大きいと私は思います。乳幼児を育てているお母さんにぜひ学んでいただき、実行していただきたいというのがこの本を読んでの私の感想です。
 今日で、この本については終了です。参考になる箇所がたくさんありましたが、分量の関係で略させていただきました。ぜひ、全文をお読みいただければ大変参考になると思います。
 2020年4月から始めて、記事番号も798号になりました。できれば続けたいと思っておりますが、まだ読みたい本が決まっておりません。4人目の孫娘も生まれました。次の本が見つかりますまで、しばらくお休みしたいと思っています。お出かけいただきました皆様、本当にありがとうございます。
 再開することがありましたら、お出かけいただければ幸いです。

 

「語りかけ」育児 48

 3歳から4歳までの 1日30分間 語りかけ育児 (続)
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◆ この年齢でやってはいけないこと
 以前からの「やってはいけないこと」のいくつかがまだあてはまります。
◎ 絶対にこどもの話し方を直してはいけません。
 これはとても大切なことです。もしこどものことばや文がはっきりしないなら、あなたがはっきり言って聞かせるのがいちばんです
◎ こどもに話し方を意識させないようにしてください
 吃音になりやすい時期を通り過ぎようとしているときには、とりわけ大切です
 こどもが伝えようとしている内容に応えるのが大切なのであって伝え方に気をとられる必要はありません

◆ 「語りかけ育児」の時間以外には
◎ こどもに遊べる時間と場所を与えます。
◎ やりたいときにはたくさん自分でやらせます。
◎ 注意レベルに気をつけましょう。
◎ ほかの子と遊ぶ機会をたくさんつくります。
◎ もしできるなら、たくさん外で遊ばせましょう
◎ 自然に親しませ、新しいことをたくさん発見させましょう。

【まとめ】
 ここに書かれているのは平均的な発達のようすです。赤ちゃんによってそれぞれ発達は異なります。おこさんがここに書かれていることを全部できていなくても心配ありませんが、満4歳で、「気がかりなこと」にあてはまる場合は、専門家に相談してみてください。また、赤ちゃんについて疑間な点があれば、いつでも保健婦や、かかりつけの医師のところに連れて行きましょう。

◆ 4歳ころのこどものようす
◎ よく知らない人にも言っていることが通じるようになります。
◎ 最近のできことについてお話しします。
◎ 長い話に耳を傾け、また自分でも話し、きりなく質問します。
◎ ことばで交渉や取引をします。住所と名前が言えます。
◎ 「どうぞ」や「ありがとう」といったあいさつことばを使います。

◆ 気がかりなこと
◎ あなたが言ったことをわかっていないように見えることがある。
◎ 頼んだことをやらない。あまり質問しない。数分以上集中することがない。
◎ 話しことばがはっきりせず、動詞の活用形などの文法をあまり使わない。
◎ あなたがいないところで起きたできことについて、はっきり説明できない。
◎ ほかのこどもと遊ぼうとしない。
◎ ことばを話そうと苦労しているように見える。

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 今日のお話は、今までのそれぞれの時期と共通する内容とこの時期に留意すべき内容が話されています。やってはいけないことについては、以前から話されたことと共通することがほとんどです。「語りかけ育児」の時間以外には、ぜひこどもにやってあげたいと思われることがらがあげられています。4歳ころのこどものようすを見ますと、ことばを話したり聞いたりする力が日常生活でほとんど不自由がないくらいに伸びていることがわかります。こどもの成長発達のすばらしさを感じます。「語りかけ育児」を続けることの大切さを改めて実感する思いです。
「語りかけ育児」の具体的なやり方についてのお話は今日でお終いです。明日は、ウォードさんの「あとがき」ともいえる「言語発達と知的能力」の関係についてのお話です。

「語りかけ」育児 47

 3歳から4歳までの 1日30分間 語りかけ育児 (続)
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◆ 遊びを豊かにしましよう
 探索遊びを助けるには、適当なおもちゃや遊び道具を用意していろいろな使い方を見せてあげるのがいちばんです。しばらく興味を持ってやっていた遊びに新しい材料を加えてやると、もっとおもしろくなります。たとえば書くためにはフェルトベン、絵を描くためにはスポンジなどです。絵の具に糊を加えれば違う質感になり、小枝やくしや歯ブラシを使うのもとてもおもしろいでしょう。
 プラスチック粘上を使って、いろいろな種類の型におしつけて、さまざまな形を作ってみるのも気に入るでしょう。また、木の皮や別の材料の上に紙をあてて上からクレヨンでこすり、すり写しを作る遊びもなかなか目新しく、楽しめると思います。雑誌から写真を切り抜いてスクラップブックを作ったり、ティッシュペーパーをちぎってくしゃくしゃにしたものを色紙に貼りつけてコラージュを作る方法なども教えてみてはどうでしょう
 このように、材料をそろえてあげることは本当に大切です
 適当な遊びの材料を与えるだけで、幼児期後半にさらに大きな発達が促されるという研究もあります

 さらにあなたが、いろいろな材料をどうやって使うのかやってみせ、うまく使えるよう手伝ってやると、その効果ははかり知れないものになります。ふたりで実験や創造的な遊びを大いに楽しめます。こどもにとっては一緒にやることを楽しめ、しかもたくさんのことばが聞けるすばらしい機会です。たとえば木肌をこするときには「破片」「はげやすい」「浮き出る」「突き出る」「浮き彫り」といったことばが使えます

 以前にもやったように、こどもがすでにできることを伸ばします。プラスチック粘上が扱えるようになったら、物を押しつけて型を取ってみます。はさみが上手に使えるようになれば、形を切り抜くことを教えます。
 こどもが作ったものに感心したり、ほめてやったりすれば、こどもは驚くほど自信をつけます。自分の絵が壁に掛けてあったり、工作が窓際に並べてあったりしたら、こどもはどんなにうれしいでしよう
 簡単な盤ゲームやカード遊びの相手をするのもいいでしょう。ほかの子と遊ぶ前に、おとながルールを説明しておけば大いに助かります。
 ごっこ遊びでもおとなは同じぐらい手助けしてやれます。古いスカートやくつを出してやれば衣装にできますし、大きな箱や筒を出してきて家や消防署やガレージに見立てることもできます。
 こどもにおもしろい体験をたくさんさせることも大切です。あとで再現してみて、それがどういうことなのか自分なりにわかってきます。
 前と同じように、あなたが遊びをふくらます提案をすれば、こどもは歓迎します。こどもが消防士のつもりになっていたら、ポールをすべり下りて消防車に乗りこんだり、ホースを巻いたりするのをやってみせます。お店やさんごっこでは、商品を店の裏に積み上げたり、商品を取ってきて棚に並べてみせます。
 あなたにどんなにすてきな考えがいっぱいあっても、遊びを乗っ取ってはいけません。こどもに主導権があるという鉄則を忘れないでくたさい。こどもの遊びに干渉しすぎる親は、こどもの成長を遅らせるという米国の研究もあります
遊びの主導権はいつもこどもにあります

 もし遊び仲間がいるなら、その子たちにも手助けしてやれます。遊びにちょうどいい空間をつくって、少なくとも30分間は遊べるようにします。箱や積み木といった材料をたくさん用意して、ボートや飛行機などを作れるようにすれば楽しめます。
 こどもたちで意見が分かれたら、間にはいってあげましょう。まだこどもたちはあまり上手に相談できません

◆ こどもに質問するときには
 この段階のこどもには、注意深く選んだ質問をしてやると、ものごとをよく考えて取り組む助けになります。パズルで悩んでいたら「逆さにしたらどうなるかな?」と一言ってやれますし、積み木をやっていたら「大きいほうをこの小さいほうの下に置いたらどうなるかやってみる?」と言います。
 たくさん質問しないことと、こどもが答えないときは、かわりにあなたが答えることを忘れないように
 同じ原則が生きています。答えさせるための質問はしないこと。こどもはことばの発達がどうであれ、あなたの考えていることをわかっていて、すぐに引っ込み思案になってしまいます

    先日ニコラスがお茶にやってきたときのことです。遊んでいるニコラスにちよ
   っと声をかけてみました。ふたりのおしゃべりがどんどんはずみ、ニコラスのす
   ばらしいことばの発達ぶりがわかりました。ニコラスのお母さんはびっくりして
   しまいました。いつもは知らないおとなに慣れるのにすごく時間がかかるので、
   恥ずかしがり屋だとばかり思っていたのです。
    私はごく簡単な秘密をお母さんに教えてあげました。いま起きていることにつ
   いて話すだけで、何も質問はしなかったのです。お母さんは親戚のあるお年寄り
   のことを思い出しました。いつも腕を組んで、じっと顔を見て「さて何かニュー
   スは?」と話を始める人でした。お母さんはそのとき自分がどう感じたかを思い
   出し、質問されるのがいやなわけをさとったのです。

     **********
 今日の「遊びを豊かにしましょう」のお話は、内容がとても豊富ですね。30分の「語りかけ育児」の時間の中でお話されていることをすべてやろうというのは、とても無理なことだと思われます。子どもが興味・関心を向けているものをよく見て、それについてできることを工夫するというやり方が実際的なのではないかと思います。それにしても、お母さんがしっかり知恵をしぼらないといけない気がします。がんばりましょう。こどもに質問するときも、「ものごとをよく考えて取り組む助けになるように注意深く選んで質問したあげる」という工夫が必要のようです。これも、知恵をしぼらなければならないようですね。昨日のお話にもありました「親が遊んであげたこどもは、早期教育を受けたこどもより、学校のテストでよい成績を取ることが明らかになっています」というくだりを忘れずに楽しくがんばりたいと思います。

「語りかけ」育児 46

 3歳から4歳までの 1日30分間 語りかけ育児 (続)
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◆ 話し方
◆ こどもが注意しているものに気づきましよう
 こどもが注意を移せるようになっていても、「語りかけ育児」の時間は、いつでもこどもに主導権を持たせることが大切です。会話をするときも、「いま、ここ」について話すか、それとも未来や過去について話すかは、完全にこどもにまかせます。「ここ」や「いま」に関しての話題であれば無理に変えようとしないで、自然な流れの「実況放送」をしましよう。こどもがおもちゃをぐるぐる回していたら「あら、ぐるぐる回っている。押すと回るのね」といつたふうに言えばいいでしよう。

 くり返しますが、こどもに教え込もうとしないでください。ちょうど興味を持っていることについて聞かせてあげれば、こどもは非常に多くのことを学び取ります。こどもが色や数といった概念に興味を持ち始めたことも、こどもの本の選び方や会話でわかります。親が遊んであげたこどもは、早期教育を受けたこどもより、学校のテストでよい成績を取ることが明らかになっています
親がたくさん遊んであげたこどもは早期教育を受けたこどもより学校のテストでよい成績をとります

    3歳のベンは2語文か3語文しか話さないうえに、ことばがはっきりしないの
   で、クリニックに連れて来られました。お父さんはベンに教え込むのをなかなか
   やめられなくて、私とずいぶん議論になりました。
    3週間後、私はふたりがとても楽しく遊んでいるのを見ていました。ベンはい
   ろいろな形の大きな積み木を選んで、曲がりくねった道を作ろうとしていました。
   お父さんはベンのやっていることを見て「いい考えだ。四角い積み木は長四角の
   横にぴったり合うよ。丸いのは信号にちょうどいいね」とたまたま積み木の形の
   ことを言いました。形の名前がずっとめちゃくちゃだったベンですが、1時間も
   しないうちに正しい名前を覚えました。

◆ 聞くことを楽しみ続けるように気を配りましょう
 聞くことがすごく楽しいと思う経験をたくさんすることが大切です。こどもは音楽に合わせて歌ったり、踊ったり、手拍子を打ったりして楽しめるようになります。くり返しのある歌も大好きです。
音の出るおもちゃやわらべ歌は聞いて楽しいものです
 本を読んでもらう時間も、人の声を聞くというすばらしく楽しい経験になります。グループがつくれれば、「いす取リゲーム」のような、聞きながら遊ぶゲームも楽しめます。
 書くときにも楽しい音をつけてみます。円を描きながら「グルグル」、ジグザグなら「ジグザグ、ジグザグ」。水遊びや乗り物遊びの音も、まだ十分楽しめる年齢です。「シューシュー」と水が出て、「ザーザー」と流れていくのはおもしろいものです。

◆ 文の長さ
 もう文の長さについて考えなくてけっこうです。気楽にどんどんおしゃべりしましよう。こどもは、知らないことばがあったらその意味をたずね、もう一度言ってほしいときは、そう言えるようになっています。
 新しいと思うことばもどんどん使いましよう(こどもはいつだって学んでいるので、新しいかどうかはわかりませんが)。もうことばの知識が広がっているので、こどもの注意にそってさえいれば簡単に学習します。
 こどもにとって新しいと思われる単語は、いくつかの文の中で使ってみせると理解しやすくなると思います。「これはオランウータンよ。オランウータンはさるの仲間よ。オランウータンはとてもやさしい顔をしているわね」どいうふうです。
 こどもが吃音になりやすい時期でない限り、特別にゆっくりしゃべる必要もなく、声を大きくすることも、調子をつけることもありません。こどもはすっかりことばに慣れて興味を持ち、聞くことは楽しいと気づいています。
聞くことがまだまだ楽しめるようにしましよう

 まだ文法の間違いがあり、発音にも未熟な点はあるでしょうそのときはこどもの言ったことを、はっきりくり返してあげるとよいのです。それでも鉄則は絶対に忘れないでください自然な会話として返すこと、「そうね」で始めることです

◆ こどもの言ったことをふくらませてやりましよう
 たいていの場合、あなたはこのやり方を考えなくてもやれるようになっていることでしょう。これまでしてきたように、こどもが言ったことにもう少し情報を付け加えて会話をふくらませましよう。こどもが「はずむお城へ行ったね」と言ったら、「そうね、行ったね。そしてクマちゃんがころんで鼻をぶつけちゃったね。かわいそうなクマちゃん、ほんとうにドーンとぶつけちゃったね」というふうに付け加えてみます。
 質問の答えにも、もっといろいろ付け加えます(こどもの興味が続いているか気を配るのはもちろんです)。「どうして小鳥が小枝を運んでいるの?」と聞かれれば、巣づくりについて説明できます。こういう会話はこどものほうでどんどん進めるようになります。次から次へと質問をして、説明が十分でないと、はっきりわかるまで納得しません。

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 週明けです。今週もお出かけいただきありがとうございます。
 今日は話し方についてのお話です。どの時期を通じても心がけなければいけないこととこの時期になって変わってくることがお話されています。こどもが注意しているものに気づくことや聞くことが楽しいと思う経験をたくさんさせてあげることは変わっていませんね。それと、こどものことばの間違いに気づいたときの対応も、鉄則を忘れないように改めてお話されています。
 一方で、文の長さについて考えずに、どんどんおしゃべりができるようになったことや、新しいと思うことばも使えることなど、こどものことばの理解が進んできていることに驚かされます。「語りかけ育児」の時間が楽しく、会話の内容が膨らむようなそんな充実した時間にしたいと思います。