2020年10月 月別アーカイブ記事一覧
- 「完 子どもへのまなざし」を読む 20
2020.10.31
二 人間関係の発達と課題 (続き)乳児期 (続き) 基本的信頼が育てる、人を信じる心 私は全国各地に、また海外の都市に講演、研修会、シンポジウムなどででかけます。そして、駅や空港や町々で、親に連れられた子どもを見かけます。私は子どもが好きですから、目が合えばかならずといっていいほど、ほほ笑みかけたり、手をふったりします。子どもたちも、みんなといっていいほど、さまざまに反応を返してくれます。それがう... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 19
2020.10.30
二 人間関係の発達と課題 (続き)乳児期 (続き) ソーシャル・レファレンシングとは コロラド大学の乳幼児精神医学の専門家で、もう高齢になって引退していますが、乳幼児精神医学のパイオニアとして、世界的に高名なロバート・エムディという人がいます。この人の数々のすぐれた業績のなかに、子どもや人間の心のなかに育つ、ソーシャル・レファレンシングという感情、感性の研究があります。直訳すれば「社会的参照」とい... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 18
2020.10.29
二 人間関係の発達と課題 (続き)乳児期 (続き) 基本的信頼が豊かに育つ時期 人間の人生の重要な部分は、乳児の時期にその多くが決まります。ワロンは「喜びの共有体験からコミュニケーションの感情の発達がはじまる」といいました。ウィニコットは「お母さんから自分に与えられている愛情に安心すると、幼い子どもはお母さんから離れても不安を感じないで、ほかの人ともまじわりができるようになる」といいました。 そし... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 17
2020.10.28
二 人間関係の発達と課題 (続き)乳児期 母と子の「ほほ笑みの交換」 一八〇〇年代の終わりから一九〇〇年代の前半に活躍した、フランスの心理学者にアンリ・ワロンという人がいます。日本ではなじみの深いスイスの心理学者ジャン・ピアジェとほぼ同時代の人です。どちらも世界的に有名な心理学者ですが、日本ではたぶん、ピアジェのことは知られていますが、ワロンのことはそれほどご存じないという人が多いだろうと思います... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 16
2020.10.27
二 人間関係の発達と課題 (続き)妊娠中から育児がはじまっている 私は横浜市の小児療育相談センターに二〇年以上勤めておりました。そのころ、はじめて妊娠した若いご夫婦のための勉強会にお話に行ったことがあります。 妊娠中はご自分の体の健康だけではなくて、心の健康にも気をつけなければならないこと。赤ちゃんへの思いをいつも自分のなかにしっかりもって、あなたが生まれることを、二人で心待ちにしているという気持... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 15
2020.10.26
二 人間関係の発達と課題エリクソンのライフサイクル・モデル エリク・H・エリクソンは大変高名な精神分析家で、人間のライフサイクルのそれぞれの時期における、健康で幸福に生きていくための典型的なモデルを、膨大な資料と豊かな研究でつくりあげました。人間が幼いときから老年の時期にかけて、生涯健康で、とくに精神的に健康で、しかも幸福に生きていくためには、人生の節目節目に解決しなければならない重要な課題があり... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 14
2020.10.25
一 人間関係と社会の大きな変化 (続き)現代の社会、家庭でおきていること (続き) 日本特有のひきこもり もう四〇年以上も前のことですが、私は若いころカナダのバンクーバーに留学して、エリク・H・エリクソンを学びました。そのとき指導していただいたのは、精神分析学派の著名な学者であり、臨床者のカール・クライン先生でした。クライン先生はエリクソンの親友でもあり、私たち児童精神科の医者になろうとしている若... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 13
2020.10.24
一 人間関係と社会の大きな変化 (続き)現代の社会、家庭でおきていること (続き) 子どもへの親の虐待 横浜の児童相談所の方々が主催された、「虐待をどう防止する」という勉強会がありました。児童相談所のスタッフの方は「児童相談所の一時保護所がパンク状態で、ほかに預かってもらえる手だてを考えなければいけない。本来は虐待された子どもを預かる場所ではないのに、小さい子どもは乳児院で預かってもらっている」と... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 12
2020.10.23
一 人間関係と社会の大きな変化 (続き)現代の社会、家庭でおきていること (続き) 子どもをありのままに受容すること 京都大学大学院准教授の木原雅子氏の調査研究が「生命尊重ニュース」という冊子に掲載されていました。題して「豊かで貧しい国、日本に育つこどもたち」とあり、内容がかいつまんで紹介されています。 木原氏が実施した高校二年生の全国調査(二〇〇七年)では、万引きをしたことがある生徒は、男女ともに... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 11
2020.10.22
一 人間関係と社会の大きな変化 (続き)現代の社会、家庭でおきていること (続き) 保育園はいま 二〇〇九年の選挙で政権が交代して、「コンクリートから人へ」というスローガンのもとに、道路、建物など公共事業中心の予算編成から、子ども手当など、人に対して支出しようという政策が打ち出されているようです。けれど、実際には人間が大切にされないで、経済的なことばかりが重視されている状況は、あまり変わらないよう...