2020年12月 月別アーカイブ記事一覧
- 「完 子どもへのまなざし」を読む 79
2020.12.30
あとがき「子どもと青年と家族の健康と幸せを願って」という命題を心に秘めて、児童精神科の診療的な仕事の道を、四〇年あまり歩んでまいりました。『子どもへのまなざし』シリーズの最初の本をだしていただいてから、もう一〇年が経ちました。そのあいだにも、子どもや青年を取りまく環境は急速に変化してきました。不幸な事柄の報道も、あとを絶ちません。家族の崩壊の実態は、目をおおうばかりです。 自分は大切に育てられてい... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 78
2020.12.29
十 教えられたこと、思い出すこと (続き)思い出す母の姿 大学の図書館で、子育て支援の施策に関する論文を読んでいましたら、「国や地方行政が、子育て支援策を必要としている社会は富裕社会で、貧困社会は市民や住民が生きることのために、地域社会で助け合うことを日常の習慣にしているから、政治が子育て支援行政を実施していない」ということが書かれていました。貧困社会では、政治がそこまで手をまわすことができないこ... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 77
2020.12.28
十 教えられたこと、思い出すこと (続き)教えることは学ぶこと、君たち大変だねえ 私は小学校三年生のときに、父の郷里の滋賀県の農山村に疎開をしました。第二次世界大戦の敗戦をむかえたのは、一〇歳で小学校四年生のときでした。村の小学校、中学校を卒業したあと、自転車で山越えをして通学する滋賀県立日野高等学校を卒業しました。高校でも、何人もの先生に多くのことを学びましたが、化学の高田徳二郎先生のことが、ま... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 76
2020.12.27
十 教えられたこと、思い出すこと (続き)生徒に親切な思い出を 一九四五年の敗戦をはさんで、高校を卒業するまでの一〇年間を、私は滋賀県の過疎の村ですごしました。貧しい閑村に非農家として疎開していた私たちの生活は、極貧をきわめていました。子ども心に記憶されているものとして、私たち兄弟が学校に持参する弁当の中身は、とてもみじめなものでした。教室で、みんなの前で弁当を開くのが恥ずかしくて、天気のよい日は... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 75
2020.12.26
十 教えられたこと、思い出すこと (続き)やりたいことより、期待されていることを 若い日にカナダのバンクーバーに留学したときに教えられたカール・クライン先生は、精神分析学派の高名な学者であり臨床者でした。アイデンティティなどの概念で著名なエリク・H・エリクソンと親友でした。先生をとおしてエリクソンの業績や、フロイトの精神分析の講義を受け、深く学ばせていただいたことに感謝はつきません。クライン先生は... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 74
2020.12.25
一〇 教えられたこと、思い出すこと幸福は分かち合うもの 一九七〇年、私はバンクーバーに留学し、ブリテイッシュ・コロンビア大学病院のレジデント(研修医)となりました。実際はアパートに住んでいましたが、レジデントの本来の意味は、一般の医師が専門医になるために、病院に住みこんで訓練を受けるということです。そこで私の指導教授だった二人の先生のうちの一人は、アンドリュー・マクターダット教授という児童精神医学の... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 73
2020.12.24
九 ティーチ(TEACCH) (続き)日本でのティーチプログラムの実践 ティーチプログラムに出会う前、私はソーシャルワークに専念する数人の仲間と、子どもの生育や発達を支援する活動に励んでいました。ただその活動は手探りでありまた当時の、私たちの自閉症に関する知識や経験は、現在のものとくらべれば未熟で不正確なものもあり、今日からふり返ってみれば、あやまりもあったと反省することもあります。学校、職場、あるいは... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 72
2020.12.23
九 ティーチ(TEACCH) (続き)デンマークの社会福祉の考え方 デンマークはノーマライゼーションの思想が発祥したところです。ノーマライゼーションというのは、障害がある人もない人も区別されることなく、社会生活をともに生きていこうという社会福祉の考え方です。自閉症の統合保育、統合教育に関しても、かつてはもっとも熱心におこなった国だろうと思いますが、成果はあげられませんでした。高機能自閉症の子どもにも、成... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 71
2020.12.22
九 ティーチ(TEACCH) (続き)子どもたちの理解のためのビデオテープ 自閉症の人を保育し、教育をし、社会生活への福祉的な支援をして大きな成果をあげているティーチプログラムは、アメリカでは四五以上の州で熱心に導入がはかられています。また、少なくとも世界の四五か国が一生懸命に導入しようとしています。アメリカのノースカロライナ州では、自閉症スペクトラムを理解してもらうためにつくられた、小学生用のビデオテ... - 「完 子どもへのまなざし」を読む 70
2020.12.21
九 ティーチ(TEACCH) (続き)地域のなかで自立生活を 二〇〇八年の夏もまた、三〇人くらいの仲間と、ノースカロライナヘティーチプログラムの発展を学びに行ってきました。教師、医師、福祉施設職員、保護者、そのほかの関係者と、グループで学んできました。よく準備をされた講義を聞き、自閉症の人たちが住み、働き、余暇活動を楽しむ、多様な施設を訪問しました。 グループホームやアパートのほか、就労や余暇活動の準備...