「子どもへのまなざし」を読む 25 - かわいがり子育て

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「子どもへのまなざし」を読む 25

『生命との出会い』 (続き)

 出産直後から母と子はいっしよがいい
 それから胎生医学からひきつづいて、周産期医学の専門家たちが、この
十何年の間に、私たちにつぎつぎと新しい知識を教えてくれました。それ
出産直後から、どのような母子の関係がいいのかという研究の結果です。
 近代の医学や医療では、健康な赤ちゃんが生まれますと、「元気な赤ち
ゃんですよ」とか、「男の子ですよ」、「女の子ですよ」といって、お母
さんに赤ちゃんをみせたあと、すぐに新生児室へ引き取られます翌日か
らは、母子はそんなにいったりきたり接触はしないで、退院のときにはじ
めて、赤ちゃんがお母さんのところへ返されるです。そういうのが、ふ
つうの産院のあり方です。新生児室は温度も湿度もよくコントロールされ
ていて、さらに滅菌された部屋なので、赤ちゃんの健康を維持するには、
最適な条件がととのえられているわけです。一週間ほどの入院の間は、と
きどきお母さんがみにいくとか、授乳のときだけ赤ちゃんをちょっと預か
って、またすぐに新生児室に返すというのがふつうなことなのです。そし
て、母親のところに赤ちゃんが戻されるのは退院のとき、約一週間ぐらい
のブランクのあとなのです
 こういう出産直後の人間関係、母子関係、あるいは健康管理というもの
が自然なことなのか、不自然なことなのかということを、調べようと考え
た英国の研究グループがありました。その後、英国だけではなくて、おな
じような研究がアメリカでもおこなわれました。近代的な病院で長い間お
こなわれてきた、出産と入院中の母子の関係が、その後の心身の健康や親
子のあり方として、広い視野からみて、本当に最善なのか、もしかして、
不自然なやり方なのかもしれないと考えた研究者たちがいました。
 そこで、こういう実験が、英国で最初におこなわれました。母子のどち
らかに特別な異常があったり、未熟児であったりしたら、これは話は別で
す。赤ちゃんが健康な状態で生まれてきたときには、お母さんのところへ
出産直後から退院まで、ずっと預けっばなしにしておくというグループと、
従来どおり、赤ちゃんが生まれると一目みせてすぐ新生児室へ引き取って、
翌日からは授乳のときだけ連れてくる、そしてお母さんへ赤ちゃんを戻す
のは退院のときというグループ。この二つのグループにわけて、その後ず
っと母子を学齢くらいまで、追跡して観察をしていきました。そうしまし
ら、当初に予想や想像された以上に、二つのグループに大きな差がいろ
いろと観察されたのです。
 最初の実験的な研究は、生まれたらすぐ母親のところへ赤ちゃんをおい
て、看護婦の手を借りて、育児をしながら産後の静養をするというやり方
でおこなわれました。こういう方法に協力してくれるお母さんはいません
かということで、ロンドンのシティセンターにある産院と、郊外にあるも
うひとつの産院の二つとで、お母さんたちによびかけました。
 一定の研究成果がでた段階で、研究者たちは学会でリポートしたのです
、そのときにほかの研究者はどういう反応をしたかといいますと、「
ういう実験的なことに賛成するお母さんは、それだけ特別な母親なのだ。
だから、その後の育児にも一定の傾向や影響があるのはとうぜんで、結果
がことなっても不思議ではない」という異論でした。
 確かに、そういうことに協力をしようというお母さんは、特別なお母さ
んだから、特別な育児をする意欲をもったお母さんであり、したがって子
どもの様子がその後、ちがうということはありえるといわれれば、それは
それで、実験した研究者は簡単に返す言葉はないわけです。
 こんどは二つの産院でどういう方法をとったかといいますと、たとえば、
偶数日出産した人はAの方法で、奇数日に出産した人はBの方法という
ように、いってみれば、それまでどおりの普通群と新しいやり方の実験群
にわけたのです。普通群は従来の産院でやってきた方法、実験群は生まれ
るとすぐお母さんのもとにおかれる方法です。普通群のやり方は、従来の
近代的な産科学が長い年月にわたってやってきた方法なのだから、それは
それで、今日の最善の方法なのです。また、実験群というのも、予備的な
研究の結果、もっといい成果を生むかもしれないということが、仮定され
ものなのだから、たまたまどちらになっても、母子にはそう迷惑をかけ
る方法ではないということで、実験はスムーズに進行したようです。
 どちらも高名な産院ですから、その二つの産院によせられる市民の信頼
は大きいわけでして、そこでおこなわれることだからということで、じっ
さいに実験がおこなわれたわけです。出産日が偶数日であれば従来の普通
群、奇数日に赤ちゃんがたまたま出産すれば、それだけで実験群のほうに
入ってしまうわけです。もちろん、どちらかの方法に最初から強い希望を
もっている人には、その方法で出産後の母子のケアーがおこなわれたこと
はとうぜんです。
 ですから、従来どおりの普通群も、あらたな実験群も、とくにどういう
タイプのお母さんであるとかは考えられなくなるわけです。潮の満ち引き
なんかいろいろあったりして、偶数日にはどういう体質の人が出産するな
んてことを、いう人がいるかもしれませんが、まあそんなことまでは、あ
まり考えなくてもいいとしましょう。それでやりましたら、どういう結果
がでたかということです。
 経過が順調ですと、一週間ほどして退院していきます。そして、母子の
定期健康診断をしていきます。とくに子どもの健診だけでなく、母親の育
児態度もみていくのです。一か月健診、二か月健診、三か月健診をという
ぐあいに、母と子をフォローアップしていくわけです。健診の場所はくふ
うがなされていて、乳児を診察するための診察台や身長・体重の計測器な
どを、一定の条件で配置しておくわけです。そして、決まった手順で赤ち
ゃんを引き取って、診察していきます。さらに、その様子をビデオテープ
でずっと記録しておいて、あとでその内容を検討するのです。
 それでわかったことは、普通群のお母さんは、「さあ、赤ちゃんをこち
らにくださと看護婦さんにいわれると、さしだされた看護婦さんの手
に赤ちゃんを、さっとわたしてくれる、そういうお母さんが多いというこ
とがわかりました。ところが、験群のお母さんのほうは、「さあ、どう
ぞこちらにと看護婦さんが手をさしのべても、診察台まで、自分で連れ
ていこうとするお母さんが多いのです。そして、赤ちゃんの着ている服を、
自分でぬがせようとするお母さんが多いのです。普通群のお母さんは、看
護婦さんに預けっばなしでみている人が多い、そして、物理的にも心理的
も、実験群の母親よりやや客観的にみているのです。これは、実験のビ
デオテープをみせてもらいましたけれども、じつにみごとなものですよ。
 実験ですから、診察室には意図的に一定の条件や設定がなされてありま
す。衝立なんかも立てまして、その裏側に体重や身長をはかる計測器をわ
ざとおいておくのです。そしてお母さんにひとこと、「ちょっと身長と体
重をはかりますからねといって、看護婦さんが赤ちゃんを衝立の裏にす
っともっていくわけです。
 普通群のお母さんというのは、わりあい「はいといって、そのまま待
っていらっしゃる。ところが実験群のお母さんの多くは、衝立の裏側をの
ぞきこむということがわかりました。それから、診察がもうそろそろ終わ
りそうだなと思うと、実験群のお母さんはすばやく赤ちゃんのところに寄
ってきて、自分で服をまた着せようとします普通群のお母さんは、看護
婦さんが着せて、戻してくれるのを待っている傾向が強い、傾向がです。
例外はたくさんありますよ、もちろん。ひとり残らずそうだというので
ありません。けれども、おおぜいの母親で観察しますと、はっきりそうい
うちがいがでてくるわけです。

 胎児期から出産直後の母子関係についての新しい知見ですね。最近は出産直後から母子を一緒にしている産院や病院が多くなっているように聞いておりますがどうなのでしょう。

 この節は長文なので、二つに分けました。続きは明日読みたいと思います。ありがとうございます。


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