「子どもへのまなざし」を読む 27 - かわいがり子育て

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「子どもへのまなざし」を読む 27

『乳児期に人を信頼できると子どもは順調に育つ』
 人生のはじめ、ほかの人との関係をスタートする乳児期に、赤ちゃんは
どのように育てられることがもっともいいのか、どうすれば子どもの気持
ちが生き生きと健全に育つのか、ということを考えてみようと思います。
私は20年以上も、保育や育児について話し合ったり勉強したりする会を、
や神奈川など各地の保育者や若いお母さんたちと、もう何百回どころか千
回をこえるほど多く積み重ねてきました。そのつど、私たちはできるだけ
広い範囲での発達論とか成長論とか成熟論、あるいは臨床者や研究者たち
の、いろんな議論や実験や観察などの報告を勉強してきました。それと
分たちのクリニックや、保育園、幼稚園、学校、家庭、地域社会などで接
する子どもたちとの経験を、時間をかけて検証してまいりました。
 そのなかで、今日の日本の社会で子どもとか親子の問題を考えるために、
もっとも意味深いと思う発達論のひとつに、エリクソンという人の発達論
があります。エリクソンの書物に書かれていることをそのままではなくて、
現代の日本の子どもたちをみながら、子どもたちの健全な発育のためには、
彼の理論をどのようなぐあいに応用して考えるのがいいのか、私の考え方
を述べてみようと思います

 新しい章です。エリクソン発達論を踏まえ、いまの日本の子どもたちの健全な発育にどう役立てればいいのかという佐々木先生のお考え読み進められる章です。楽しみに読み進めたいと思います。

 多民族国家アメリカでのエリクソンの研究
 エリクソン長い年月をかけて、人間のライフサイクルの意味や、健康
・不健康な人間の存在のあり方をみつめてきた、精神分析家であり臨床家
です。
 彼の業績のなかで、私がもっとも重宝な学び方をしているところは、人
間が精神的に健康に、健全に生きていくためには、とくに社会的な存在と
して安定した生き方をするためには、乳児期から老年期まで、どういうこ
とに気をつけて、どのような課題をしっかりと消化していくべきかを示し
てくれたところです。そしてそれが、今日のわが国の社会の病んだ部分と、
子どもや若者の病みぐあいを考えたり解決するために、非常に大きな示唆
を与えてくれると思えるところです。
 エリクソンは人間のライフサイクルにかんする多くの事柄を、長い年月
をかけて実証的に検討してきました。そして、自分がなぜこのようないい
研究ができたかということについて、彼はアメリカという多民族国家に住
んでいたからだといっています。なぜ多民族国家がよかったのかというこ
とについては、それは人種のるつぼといわれるぐらい、いろんな民族の人
たちが世界中からあつまって、いっしょに暮らしているからだといってい
ます。じっさいェリクソンもアメリヵ国籍をもつユダヤ系デンマーク人で
あり、アメリカに移住してきたということでは、もともとは外国人といっ
てもいいでしょう。
 人種のるつぼといわれるアメリカに住んでみると、本来、世界のあちこ
ちの国籍だった外国人ばかりが、つぎつぎに移住してきていろんな考えや
思想、いろんな文化や伝統や宗教をもちこんで、そのまま生活しているわ
けです。それぞれが、それぞれのやり方で生活しているのです。けれども、
そのような多民族国家の家庭や学校、地域社会などで、どんなやり方で子
どもが育てられていても、健康で健全に育つためには、このことだけはぜ
ったい共通しているという部分を、 エリクソンはぬきだす作業をしてきた
のです。
 エリクソンは、子どもをどんなやり方で育て教育していても、この部分
だけは省略できない、あるいはこうやらなければ健全に育たないという、
いわば必須ともいえる基本的な要件とはなにかということを、私たちに示
してくれたのです。
 さらにエリクソンは、乳児期に、幼児期の前半に、幼児期の後半の児童
期に、学童期に、思春期に、青年期に、若い成人期に、そして壮年期や老
年期までの人間のライフサイクルの各段階で、ういうことさえきちんと
満たされていれば、人間はほぼまちがいなく精神的に健康に、社会的にも
成熟のプロセスを歩むことができますよ、という課題のようなものをぬき
だして提示してくれたのです。人間のライフサイクルとおして、社会的
存在としての人間の健全な、同時に不健全なありようを提示してみせてく
れたのです。これはほんとうにすばらしい、生きた臨床研究であります。
今日からみても、本当にすごい気づきだと思います。「ああ、こういうこ
となのか」ということが、あらためてよくわかります。
 不健康な状態で、あるいは社会的な人間関係の場に適応できないで、苦
しんでいる現代の少年や青年をみていると、なるほど、エリクソンのいう
その部分がぬけ落ちている、あの部分が不足していると思うものが、まち
がいなくあるのです。けれども、ぬけ落ちた部分や不足した部分を、みん
なで確実におぎなってあげることによって、少年や青年たちはその困難か
ら脱出することができるのです。
 よくそういう共通部分をみつけだしたという意味では、エリクソンとい
う人は本当に天才の人だと思います。
 エリクソンの功績の概観です。次節以降、ライフサイクルに応じた課題についてエリクソンの発達論を踏まえて佐々木先生の話が展開されます。ていねいに読み進められたらと思います。今日はここまで。お付き合いありがとうございます。
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