「子どもへのまなざし」を読む 34 - かわいがり子育て

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「子どもへのまなざし」を読む 34

子どもの望んだことを満たしてあげる (続き)
 ソーシャル・レファレンシング
 幼い子どもが、はじめて出会ったことにたいして、どうすればいいの
かなとふり返ったとき親や祖父母や保母さんや幼稚園の先生などの視
線が、かならず見守ってくれていて、そして、どうすればいいのか教えて
くれる。そういう過程をとおして、幼い子どものなかに育っていく人間的
な感情や感性を、ソーシャル・レファレンシングとよんでいます。

 昨日、乳幼児がはじめて出会うとまどいの節で、愛着形成と共通するところがあるのではないかと感想を述べましたが、ソーシャル・レファレンシングという視点は、乳幼児の感じる不安や恐れに注目するのではなくて、乳幼児がはじめて出会うとまどいへの対処という視点から考察されているようです。

 ソーシャル・レファレンシングというのは、乳幼児精神医学の世界的な
第一人者、コロラド大学のロバート・エムディという人の言葉です。エム
ディは、いろんな環境で育った乳幼児を、思春期、青年期まで追跡観察し
て、どういう環境でどのような育ち方をすると、どのような人格をもった
人間に育つのかということを、たんねんに調べたのです。その研究の成果
のなかから、彼はソーシャル・レファレンシングという、人間の社会的存
在としての基盤をなす、高度な感情や感性に注目しました。
 ソーシャル・レファレンシングという言葉は、ちょっと日本語にしにく
い言葉です。たとえば、スキンシップという言葉がありますが、日本語で
どういいますかといわれても、ちょっと用語をみつけにくいでしょう。そ
ういうふうに、日本語にしにくい英語のひとつです。
 本来、人間にはソーシャル・レファレンシングという感情や感性は、自
然に育つものなのです。「ソーシャル」というのは、「社会的な」という
ソーシャルですね。「レファレンス」のもとの言葉は、なにかを「参考に
する」、あるいは「引用する」という意味です。ですから、英語の論文を
読みますと、最後にレファレンスとあって、引用文献とか参考文献という
のがでています。ここでは社会的になにかを参考にするとか、引用しなが
ら生活していくという意味で、エムディは、人間には社会的なそういう感
性があることを指摘し、それが育っていく筋道をみつめたのです。
 はいはいをしていった、よちよち歩きをしていった子どもが、「おやっ、
どうしようかな」と、とまどった、あるいはおそれを感じた。どうしよう
かとふり返ったら、だれも自分をみていてくれなかった。あるいはそばに
いても、よそみをして別のことをしていたそういう経験を度重ねてきた
子どもには、大きくなったときにソーシャル・レファレンシングの感性が
いろんな意味で育っていないということがわかったのです。子どもが「ど
うしようかな」と迷ったとき、まわりの人の教えや行動を参考にしようと
しても、だれも見守っていてくれなかったわけです。ですから、「社会的
なにかを参考にしようとしてもできないので、そういう感情や感
性は身につかないのです。
 ソーシャル・レフアレンシングは人間が社会的なルールを守りながら生
きていくために、その基盤をなす重要な感情であるともいえます。人が人
と共感し合ってそのことを誇りと感じ合って生きるために必要な感情
のです。

 人間は社会的存在だとか社会的動物だとかといわれますが、社会生活を営むうえで、社会のルールを身に着け、守らなくてはいけないことはしごくとうぜんのことです。その基盤をなす感情や感性のようなものが乳幼児期に、親や祖父母、保育士や幼稚園の先生など身近な人々に見守られ、どうすればよいかを教えられることによって育っていくのです。

 基本的信頼感、自己肯定感、自尊感情、愛着形成・・・表現と意味するところは多少違うのかもしれませんが、子どもに目をかけ、手をかけ、言葉をかけ、愛情をかけるというかわいがり子育てによって、子どもの中に形作られていくということですね。お付き合いありがとうございます。続きます。

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