「子どもへのまなざし」を読む 84 - かわいがり子育て

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「子どもへのまなざし」を読む 84

『豊かな社会がもたらすもの』 (続き)
 喜びの感情を失ってしまった
 そういう若者たちに会ってみると、彼らはしばしば、喜びや悲しみの感
情を、失ってしまったようにみえるのです。喜びを感じる感情、感性が稀
薄になってしまった、一見すると、感情の起伏がなくなってしまったよう
なのです。ところが一方では、怒りをとても感じやすくなっているので
す。喜びと悲しみを感じなくなって、怒りをとても強く感じるようになっ
ているというわけです。
 これはよくわかるのです。喜びと悲しみの感情というのは表裏一体にな
った感情で、ひとつの感情です。ですから、ささいなことでも大きく喜べ
る人は、また、ささいなことで、深く悲しめるものです。私は人間にとっ
て、喜びと悲しみの感情はとてもだいじなことだと思っています、とても
人間的な感情だと思っています。自分におきたなにかについて、大喜びで
きる、感謝ができる、悲しむことができる家族のことも友達のことも、
いっしょに喜んであげられるし、悲しんであげられる。私は人間がこうい
う感情をもつということは、非常に人間的なことで重要なことだと思って
います。
 喜びと悲しみの感情というのはひとつのセットになったものですから、
たぶん、片方だけ強いという人はいないわけです。喜びの感情というの
は、かならず背中合わせに悲しみの感情をもっているものです。
 喜びと悲しみが表裏の感情だとすれば、怒りの感情はどんな感情とセットになっているのでしょうか。怒りの感情を強く感じるとすれば、セットになっている感情も強く感じることができるはずですよね。そのことも知りたいと思いました。
 また、おなじようにセットになった感情として、優越感と劣等感もあり
ます優越感の強い人は、自分よりすぐれたと思う人の前では、劣等感を
強く感じます劣等感の強い人も、自分より弱い人をみつけると、その人
に優越感を感じるというように、優越感と劣等感の感情も背中合わせの関
係が、非常に強い感情なのですね。
 人間はだれにも、そういう感情はいろんな程度にもっているのですが、
できることなら、私たちは優越感と劣等感という感情はできるだけ小さ
く、弱くもちたいものです。すぐれた人の前にいっても劣等感を感じな
い、すぐれていない人の前にいっても、優越感なんか感じないでいられる
のがいいと思っているのです。
 私が興味を持っているアドラー心理学の祖は、劣等感の研究で知られています。アドラーによれば劣等感そのものは、あるべき、あるいは、ありたい自分と現実の自分の差異を自覚することから生じる感情で、理想の自分を目指すためのエネルギーにもなりうるもので、それ自体には良し悪しはないとされます。しかし、それを、他人との関係に優劣を持ち込もうとするとき、佐々木先生の指摘するような状況が出てくるということでしょう。能力の差を人としての価値の差だと錯覚するとき、こういうことが起きるのでしょうね。続けます。
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