「完 子どもへのまなざし」を読む 15 - かわいがり子育て

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「完 子どもへのまなざし」を読む 15

二 人間関係の発達と課題
エリクソンのライフサイクル・モデル
 エリク・H・エリクソンは大変高名な精神分析家で、人間のライフサイ
クルのそれぞれの時期における、健康で幸福に生きていくための典型的な
モデルを、膨大な資料と豊かな研究でつくりあげました人間が幼いとき
から老年の時期にかけて、生涯健康で、とくに精神的に健康で、しかも幸
福に生きていくためには、人生の節目節目に解決しなければならない重要
な課題があります。エリクソンは、それをクライシス(危機)といいました
が、日本語の感覚では発達課題といったほうがわかりいいかもしれま
せんので課題あるいは発達課題という言い方をします
 また、人生の節目節目(乳児期、幼児期、児童期、学童期、青年期の前
半の思春期、若い成人期、壮年期、それから老年期)に、重要な発達課題
があるとお話しましたが、エリクソンは、節目節目の時期に年齢の区分を
しておりません。本書では、わかりやすくするために、乳児期は何歳から
何歳というような言い方をしているところもありますが、おおよその目安
としてご理解ください。
 私たちは、それぞれの時期の発達課題をきちんと解決しながら、人生を
歩んでいくわけですが、絵に描いたような幸せ、自己実現ということは、
実際には、なかなかむずかしいことでしょう。けれど、それを上手に解決
していくことによって成熟していき、最後には、自分の人生はこれで本当
によかった、と思うことができたなら、人生を安心して終えていくことが
できます。エリクソンは、これが人間の一番健康で幸福な生涯といえるの
です、といいました。
 エリクソンの考えは私自身の生き方を考えるときのバックボーンであ
り、いつもふり返って、ものを見つめるときにはエリクソンがいます。私
と家族との生き方を考えるときも、診察を依頼される相手の人、子どもで
あれ、おとなであれ、その家族のことを考えるときも、エリクソンのライ
フサイクル・モデルが頭のなかにあり、いつも指針を与えられてきまし
た。
 子どもの誕生から老年にいたるまでのあいだ、どういう時期にどういう
ことが達成されていないと、人は健康で幸福に生きていくことが困難にな
るかということが、エリクソンのライフサイクル・モデルをとおしていろ
いろとわかりました。そして、エリクソンの考えの原理をしっかりもって
いれば、自分の子どもであれ、保育園、幼稚園の子どもであれ、とても子
どもを育てやすい、あるいは、自分自身も育てやすいことに気がつきまし
た。
 エリクソンは人間というものは、それぞれの時期に、体験して解決し
ていかなければならない大切な課題があるといいました。ライフサイク
ルを心の問題としてとらえ、精神的、心理的にも、健康で幸福に生きてい
くためには、それぞれの成長、発達の段階に、解決していかなければなら
ない大切な課題やテーマがあります。そして、それを解決しないまま、先
送りしていくことはできないものなのです。
 ところが、それぞれの課題をその時期に解決しないまま、あるいは、人
格の大切な部分の欠落をもったまま、おとなになってしまいますと、その
ぶん健康で幸福に生きてこられなかったり、とても不幸なことに、精神的
に病んだりすることがあるということを、エリクソンはとても緻密な研究
のなかで実証したのです。
 人間の成長、発達には、知能の発達とか運動能力の発達とか、いろいろ
な側面がありますが、いま、私がお話している発達というのは、あくまで
社会的な人間関係の発達のことです。「社会性といったはうがわかり
やすいかもしれませんが、どちらにしても、社会性の発達の最初のステッ
プは、人を信じるところからはじまりますとエリクソンは指摘しまし

 人間は、小さいときに解決すべき重要な課題をその時期にきちんと解
決しておかなければ、小学生、中学生、高校生と大きくなっても、社会的
な人間関係が育てられず、社会に適応できないで苦しむことになってしま
います。身近な例が不登校です。それから、体も知能も年齢もおとなにな
ったけれど、二〇歳になっても、二五歳になっても、働く意欲がでてこな
い、感情がわいてこないで、ひきこもりになったりしています。
 そういう人たちを子どものままでおとなになってしまったという意味
、アダル卜・チルドレンと呼んだりしていますが、この人たちは、子ども
のときの課題が未解決のままで、先に行けないで苦しんでいるのです。そ
一つの典型的な例は、境界性人格障害といわれています。近年、このよ
うな人がふえています。
 それでは、エリクソンが残した言葉をとおして、私の四〇年ほどの臨床
経験のなかで、これは本当だ、と私自身にも確認できたと思うことをお話
していきます。
 第二章に入りました。佐々木先生の生き方のバックボーンになっているという、エリクソンの考え、ライフサイクル・モデルについてしっかり学んでいきたいと思います。そして、なんといってもその基本は、基本的信頼感の獲得だと私は思っています。
 子どもの相談や、子育て教室などに関わらせていただくと、子どももそしてお母さん自身もこの課題でつまづいているのではないかと思うことがよくあります。
 「人生はいつでもやり直しができる」という佐々木先生の言葉をかみしめながら、仕事に向かいたいと思います。お付き合いありがとうございます。続きます。 
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