「完 子どもへのまなざし」を読む 20 - かわいがり子育て

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「完 子どもへのまなざし」を読む 20

二 人間関係の発達と課題 (続き)
乳児期 (続き)
 基本的信頼が育てる、人を信じる心
 私は全国各地に、また海外の都市に講演、研修会、シンポジウムなどで
でかけます。そして、駅や空港や町々で、親に連れられた子どもを見かけ
ます。私は子どもが好きですから目が合えばかならずといっていいほ
ど、ほほ笑みかけたり、手をふったりします子どもたちも、みんなとい
っていいほど、さまざまに反応を返してくれます。それがうれしくて楽し
いのです。
 新幹線のプラットホームで、お母さんのあとを小走りに追いかけていた
子どもに、笑顔を送り、手をふったことがあります。一瞬、子どもはちょ
っと困ったような表情をみせます。しかし、急いでお母さんを追いかけ
て、お母さんの手か洋服の一部につかまると、ふり返って私を見てくれま
。そして、たいていは笑顔を返してくれますし、手をふってバイバイの
合図を送ってくれるのがふつうです。
 子どもというのは、みんなこうなのですね。お母さんの手につかまって
安心すると知らない私にも、親しみの感情を惜しみなく向けてくれる
です。親に保護されていることをしっかり実感できると、子どもは周囲の
見知らぬ人にさえ、親愛の気持ちをいだけるのです。親や家族にしっかり
保護されていることを、子どもに感じさせてあげることの大切さが、こう
いう小さな日常のしぐさや行動のなかにもみられるのです。
 もう一つ、基本的信頼が育った子どもだなあ、と感じた出会いをご紹介
します。名古屋で、ある学会の特別講演を依頼されまして、会が終わった
ときに、私はとてもりっばな花束をいただきました大きな花束をかかえ
、帰りの新幹線を待ってぼんやり立っていましたら、私の足もとで何か
音がしたように思い、見ると、二歳になったばかりくらいの女の子が、私
のすぐそばにきているのです。びっくりいたしました。そして、何かいっ
たらしいのです。
 私は、しゃがみこんで「何かいったと聞きましたら、「きれいなお花
だねっていったの」と、おじさん聞こえなかったの、といわんばかりでい
いました。「そう、きれいなお花をいただいてきたんですよと私がいい
ましたら、その子は「ふ―んといってから、急に「おじさん、いないい
ないばあ知っている」と、やってみせてくれたのです。びっくりしてまわ
りを見ましたら、ホームのベンチにおじいさん、おばあさん、お父さん、
その子の二歳くらい上の女の子がいましたおばあさんが恐縮して「すみ
ません、おじゃまして」といっていました。「そんなことありませんよ、
楽しませていただいています」と私はいいましたが、本当に楽しいひとと
きでした。
 その子は見知らぬ私に寄ってきました。きっと積極的に人の善意を信じ
ている子どもなのでしょうね。子どもによっては、そのように向こうから
働きかける子がいます。あるいは、こちらから働きかけたら、積極的に反
応する子もいるし、はにかんで人見知りする子もいます。どちらも正常な
ことです。おたがいの気持ちが通じ合うということは、人を信じる基本的
信頼が育っているということで、だからこそコミュニケーションの感情も
発達しているのでしょう。
 一方、鉄道の駅や街路で、おとなの早足でどんどん歩いているお母さん
を、幼い子どもが一生懸命に追いかけている情景を、ときどき見かけるこ
とがあります。なかには、子どもをふり返って見ることもしないまま、自
分のペースで歩いているお母さんもしばしば見かけます。そんなとき、私
はちょっと悲しくなります。幼い子どもをふり返ってあげる、あるいは、
子どもの歩く早さに合わせて歩いてあげるという感情を、心のなかにもた
ない若いお母さんは、自分が子どものころに親から同じようにされてきた
のでしょう。
 数年前、ある県の報告で、高齢者が自分の息子や娘から虐待される件数
が、一年間に四倍もふえたことを教えられました。若い親たちが幼い子ど
もを虐待することに目を奪われているうちに、虐待は高齢者のほうにも拡
大していたのです。
 人間は、自分だけの幸福を求めても、けっして得られるものではない
いうことを、以前にお話しましたが、だれかを幸福にしながら、喜びを他
者と分かち合いながらでなければ、私たちは幸福にはなれないということ
を、いま一度考えたいものです。
 乳児期の発達の課題の最終節です。繰り返し、のべられていることは「基本的信頼」の感情をどのように身につけてあげられるかだったように、私は理解しました。喜びを分かち合えること、相手の喜びを自分の喜びと感じられ、そのことに自分の幸せを見いだせる感性を身につけたいと、しみじみ実感しています。お付き合いありがとうございます。幼児期の発達と課題に入ります。
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