「完 子どもへのまなざし」を読む 45 - かわいがり子育て

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「完 子どもへのまなざし」を読む 45

五 発達障害の特性 (続き)
一度に一つの理解
 数年前、私は東京と大阪で、ドナ・ウィリアムズさんと一緒に講演をし
ことがあります。そのときの講演のなかで、ドナさんは私は一度に一
つの感覚しか使うことができないのです。だから自分は話をしながら、自
分が話していることを自分で聞き続けていることができないのです。い
ま、みなさんに準備してきたとおりのお話をしていますが自分の話の内
容をたしかめながら、お話を進めていくことができないのです」とおっし
ゃっていました。会場の聴衆は大変おどろいたようでした。私も自閉症ス
ペクトラムの特性については、理屈ではわかっているつもりでしたが、ド
ナさんのお話を聞いたときは、これほどまで大変なことなのかと、あらた
めておどろかされました
 ドナさんのお話になぞらえて、「一度に一つとはどういうことかとい
いますと、話すなら話すだけ聞くなら聞くだけにするということです。
ドナさんは話すことはできます、聞くこともできます。けれど、話すこと
と聞くことが同時にできないのです。一度に一つのことしか処理できな
い、あれをしながらこれをするのができないのです。このように自閉症の
人には、同時進行で複数のことを処理することが、非常に困難という特性
があります
 私は、さっきから長いお話をさせていただいております。自分で話をし
ながら、自分で全部聞いています。こんなお話で、みなさんに理解しても
らえたかなと思いながらお話をしています。それは自分で聞きながらお話
をしているからです。ときどき、自分でも何をいっているのか、わからな
くなるということもありますがそれも、自分でわからないということが
わかっているわけです。こういうことができるのは、話しながら聞くとい
う二つのことを同時にできるからです。ドナさんは、自閉症の人にはそれ
はできませんとおっしゃっていましたが、一般の人たちには、想像ができ
ないことでしょうね。
 高機能自閉症の人のなかには、高等学校や大学に入る人がかなりいま
す。中途退学された人もいますが、すでに卒業された人たちもいます。こ
の人たちは、目で見て理解する力が強いですから、教科書や参考書を読ん
でよく覚え、入学試験のときには覚えたことを解答用紙に再現して合格し
た方もたくさんいます。そのような知的能力の高い、高校生や大学生とお
会いしたとき、何人もの人が授業中、先生の講義を聞きながらノートを
とることが、非常に大変だったり、ほとんど不可能だったと話していま
した
 私たちは、先生の講義を聞きながら理解して、重要なところは要約して
ノートに書き取ることをふつうにしています。ノートに書いているあいだ
にも、先生の講義はどんどん進んでいきますが、その話も聞くことができ
ます。どういう意味かといいますと、先生の話を聞いていることと、同時
にノートに書き取る作業には、時間的なずれがあります。先生の話を聞い
て理解することは、現在のことであり、ノートに書き取っていることは、
ちょっと前に話されたことを要約して書いているのですから、過去のこと
です。このように時間のずれのある複数の作業を、私たちは同時進行で処
理していますが、高機能自閉症の生徒や学生は、それが非常に困難なので

 そういう場合、私はご家族の了解を得て、何人もの生徒や学生の学校へ
お願いにいったことがあります。「この人は、聞く作業とノートに書く作
業を、同時並行にやるのが非常に困難なことなのです」と、何人かのクラ
スメートにお話をして、彼らの書き取ったノートを、コピーしてあげてく
ださいとお願いしました。何事によらず一度に一つという、この人た
ちの特性を理解して支援をすることがどれほど大切かということを、み
なさんにもご理解いただきたいと思います。
 自閉症の皆さんの住む世界、知識としては多少知っていたつもりでしたが、回を追うごとに自分の不勉強を感じるばかりです。保育園児とか、幼児の相談にかかわることが多いので、学生や成人の自閉症の皆さんのお話しはよけいにそう感じます。続きます。お付き合いよろしくお願いします。
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