「完 子どもへのまなざし」を読む 46 - かわいがり子育て

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「完 子どもへのまなざし」を読む 46

五 発達障害の特性 (続き)
同時総合機能が働きにくい
 一度に一つのことしか処理できないということをシングルフォーカス
あるいはシングルトラックといいますが、先ほどのドナさんはモノトラッ
クといっています。どういうことかといいますと、何かをしようとすると
き、一つの感覚だけが動き、同時に二つの感覚は動かせないということで
。基本的には、脳の中枢神経系統のネットワークが機能不全な状態にあ
ことです。ネットワークが十分でないということは、私たちの神経の働
きのなかの多様な機能を、同時総合的に活用することがうまくいかないと
いうことです。
 たとえば、サッカーならサッカー、野球なら野球、そのほか広いグラウ
ンドでおこなわれる、スポーツのテレビ中継を想像していただくとわかり
やすいかもしれませんテレビのスポーツ中継でカメラが一台しかなかっ
たら、ずいぶん不自由なテレビ中継しかできないでしょう。テレビを見る
側としては、試合が終わるまで同じような映像をずっと見せられるような
ものですから、スポーツのおもしろさが、いまひとつ伝わってこないでし
ょうね。
 実際には、横浜球場などでおこなわれる野球をテレビ中継をするときに
は、カメラは何台も入っていることでしょう。そして、それぞれのカメラ
には役割が与えられていて、それぞれ決まったところだけを、ずっと撮り
続けるわけです。
 投手の投球の様子を一台のカメラが追いかける、打者が打ったボールだ
けを別のカメラが追いかけている。横浜ベイスターズのダッグアウト、ベ
ンチのなかだけを撮っているカメラ、試合の進行にそって観客の様子だけ
を撮り続けているカメラなど、何台ものカメラで野球中継を撮っていま
。そして、その何台ものカメラで撮られた映像が、同時にディレクター
の部屋に送られてきます。ディレクターは、何台ものカメラから送られて
きた映像を見ているわけですが、どの映像にするかを瞬時に判断し、その
うちの一つの映像を選んで茶の間に送っているわけです。
 私たちが野球場やサッカー場に行けばその何台かのカメラ以上にあち
こちを注意しながら、自分の目で全体を見ています。ところが自閉症の人
たちは、一台のカメラに相当するものしか見ていないのです。一度に一つ
という情報の処理の仕方しかできないわけです。野球場に行けば、この人
たちも全体を見ていると思われるかもしれませんが、実際には、一度に複
数のものに焦点を当てることができませんから、一つのものしか見ていま
せん。そして、いままで見ていたところから、焦点を別のところに変える
と、この人たちは、いま見ていたものがふっと消えてしまうのです。
 このように同時に複数の情報を処理できないことを、同時総合機能が弱
いといいます。いままでは、視覚の同時総合機能についてお話をしてきま
したが、同じことは動作や運動機能にもいえます
 自閉症スペクトラムの子どものなかには、トランポリンが大好きで上手
な子がよくいます。トランポリンは飛び跳ねるという単調なくり返し運動
で、基本的には足だけを使うわけですから、上手な子は二〇分でも三〇分
でも、ぴょんぴょん跳び続けることができます。だけど、跳ぶ運動が上手
だからといって、その子になわとびを教えてみようとしても、なわとびは
なかなかうまくいきません。両手でなわをまわしながら、足を使ってなわ
を跳びこすことができないのです。手なら手、足なら足というように別々
に動かすのなら自由に動かせますが、同時に手と足を動かそうとすると、
同時総合機能がうまく働かないのです。
 手の運動、足の運動、そして視力にも問題がないのに、この子たちのな
かには、自転車に乗ることが大変むずかしいという子もいます自転車は
足でペダルをこぎ、でハンドルを操作して方向を定めるというように、一
度に複数の機能を働かせて走りますから、自転車に乗れるようになるまで
は時間がかかります。それは、この子たちばかりでなく、私たちもそうい
う経験が、多かれ少なかれあるのではないでしょうか。
 そのうち、一般の子の何倍も練習して自転車に乗れるようになっても、
今度はハンドル操作をしながらブレーキ操作をするという、手に同時に二
つの別々の働きをさせる必要がでてきます。この子たちには、この操作が
また非常にむずかしいのです。ですから、ブレーキを使うかわりに、足で
ずるずると地面を擦るようにして自転車を止めることがよくあります。
 さらに、私たちは視覚と運動面だけでなく、そのほかにも推理力とか判
断力などの機能も、同時総合的に適応させながら日常生活を送っています
自閉症の人たちは、いくつもの動作を、同時に組み合わせることがで
きないで苦しんでいます。この人たちの特性を、私たちが理解して、日常
生活のなかで、さまざまな支援ができるといいですね。
 引き続き、発達障害の皆さんの特性についてです。そう言えば、自転車になかなか乗れない自閉症の子どもに出会ったことを思い出しました。この春の保育園の巡回相談では、年長児のクラスで、なわとびが全くできず、保育士さんがどうしたらいいでしょうと困っていた子どもの顔も思い出しました。練習さえすればできるようになるというわけではないのです。様々な工夫も必要になるんですね。続きます。お付き合いありがとうございます。よろしくお願いします。
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