「完 子どもへのまなざし」を読む 49 - かわいがり子育て

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「完 子どもへのまなざし」を読む 49

五 発達障害の特性 (続き)
素直で正直で一直線
 自閉症スペクトラムの人はとても素直で正直です。思ったことを思った
とおりにいいますから、素直すぎて苦労することがあります。いわれたこ
とを何でもやろうとして、苦しくなるほどやってしまう。そういうことを
まわりの人が理解してあげなければいけません。
 何度もご紹介しましたが、テンプル・グランディンさんという、アメリ
カのコロラド大学で動物行動学、畜産学の教授をしていらっしゃる方がい
ます。非常に知能の高い高機能自閉症、あるいはアスペルガー症候群の典
型的な人で、日本に二度講演会にいらっしゃいましたが、私もご一緒した
ことがあります。
 自閉症協会の人たちが横浜で講演会を催されて、たぶん、ウェルカム・
パーティを夜なさったと思います。英語がとても上手なお母さんがいろい
ろお話をなさって、「あなたにきていただいて、本当に私たちはよかっ
た。感謝しています。このパーティも私たちはとても楽しかった。参加し
ていただいてありがとうございましたとお礼をいいました
 それに対してテンプルさんは自分はこういうパーティには何も関心が
ないんですと返事をされたそうです。参加者のみなさんはびっくりされ
たそうですが、テンプルさんは「私にとって関心があるのは、自閉症の人
がどのようにして職を得るかということです」という意味合いのことを、
正直におっしやっただけのことで、悪意などはまったくないのです。テン
プルさんの気持ちのなかには、こんなに大勢の方が集まってパーティを開
いてくださってという感謝の気持ちと、疲れているから早くホテルに帰り
たいという気持ちは当然あったと思います。
 そういうとき、私たちは相手の気持ちを思いやる感情が多少ありますか
、「私も楽しかったですとお礼だけをいうでしょうね。でも、高機能
自閉症のテンプルさんには、人は人と共感する、感情の交流をする、どう
いえば相手がどう感じるかという感性があまりなかったのでしょう。これ
自閉症の人の大きな特性でしかたがないことなのです。
 講演会の控室でも、テンプルさんは人間というものは、どうしてうそ
をつくのかわからないとおっしゃっていましたが、これが自閉症スペク
トラムの人と私たちのちがうところで、一緒にいろいろなことをやってい
くとき、摩擦が生じる一つの原因だと思います。
 自閉症の人は思ったことを正直にいいます。たとえば、人を見て「どう
してそんな変なお化粧をしているの」とか「その服似合わないよ」とか、
本当にそう思ったことを相手の気持ちを考えずにいってしまいます。私た
ちは思ってもいわないでしょう。私たちは、いろんなふうに相手と調整を
取りながらやるところが、うそつきかもしれませんね。だけど社会はそれ
によって摩擦なくいくところがあるわけで、そういう能力を身につけるこ
とが社会性なのですこの人たちは、自由に話ができてもコミュニケーシ
ョンがうまくいかない、社会性の発達が一番困難だといわれるのはそうい
うことなのです。彼らのその特性を、私たちが理解することが大切なので
す。
 自閉症の人たちのこのような特性は、まだまだ理解されていません。で
すから、この人たちの就職はむずかしいのですが、就職するときには、
も相手の会社に行って「この人はこういう人ですから、こういうところに
配慮していただきたい。こういうことは悪意があってのことではありませ
ん。正直で素直で一直線で、そういう目で見ていただくと、なるほどと思
いますから。知らない人が見たら不作法に見えますが、じつは、正直でこ
うなってしまうのです。こういうと相手は傷つくだろう、だから本当はそ
うじゃないけれど、うそをいっておこうなどということはできないのです
などと、説明をして理解してもらいます
 ある自閉症の青年が就職しました。その小さな会社の社長さんはさばけ
た方で、食事はみんなと一緒にしていますテーブルのまわりに、いろい
ろな椅子をかき集めて食事をされるそうです。私たちは、そのなかで座り
心地のいい椅子は、社長さんの椅子だと思いますね、ところが、その青年
は自分がその椅子に座りたいわけです。それはそうですね、座り心地のい
い椅子なのですから。だけど、私たちは上座とか下座とかいう常識を考え
てがまんするでしょう。けれども、その青年は正直といえば正直ですが、
そういう常識という概念がほとんどないですから、社長の椅子に座ってし
まいましたこの人たちには、このようなことが日々あるということを、
みなさんのほうが理解してくださらなければいけないのです。
 なるほど、確かにと思い当たるできごとです。空気が読めないとか、状況判断ができにくいとかいう理解にあわせて、素直で正直で一直線というふうに理解していくことも必要なんだと思いました。続きます。

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