「完 子どもへのまなざし」を読む 71 - かわいがり子育て

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「完 子どもへのまなざし」を読む 71

九 ティーチ(TEACCH) (続き)
子どもたちの理解のためのビデオテープ
 自閉症の人を保育し、教育をし、社会生活への福祉的な支援をして大き
な成果をあげているティーチプログラムはアメリカでは四五以上の州で
熱心に導入がはかられています。また、少なくとも世界の四五か国が一生
懸命に導入しようとしていますアメリカのノースカロライナ州では、自
閉症スペクトラムを理解してもらうためにつくられた、小学生用のビデオ
テープがあります。今日、どこの普通学級にもアスペルガー症候群といわ
れる子どもがいますが、このビデオテープは、その子たちの日々の生活や
学習を、みんなで理解して協力してくださいということを、一般の生徒に
もきちんと理解してもらうためのものです。その一部をみなさんにご紹介
します
 そのビデオテープのなかに、四人の人がでてきます。最初にでてくるの
ニュートンです。つぎにモーツァルトがでてきます。そのつぎにアイン
シュタインビル・グイツの順に紹介されていきます。この人たちは、い
ずれもアスペルガー症候群ではないかといわれている人なのですが、どう
いう弱点や欠点があり、日々の生活でどんなことに困ったか説明していま
す。けれど、こんなに高い能力も発揮するということを、みんなにわかっ
てもらうためにつくられました。
 ニュートンは子どものころ、みんなが公園や広場で楽しそうに遊んでい
るなかで、リンゴの木をじっと見つめていたというエピソードがありま
す。じっと見つめていたら、リンゴの実がぽとんと落ちた。一般の子ども
だったら、なぜ落ちたんだろうなんて考えないでしょうね。あっ、リンゴ
が落ちた。おいしいかな、食べられるかな、こういう関心くらいしかあり
ません。そして、またすぐ、つぎのが落ちてくるとも思えないから、そん
なもの関係なく広場で遊ぶでしょう。
 二ュートンはなぜ落ちたんだろうと、とても強い関心、興味、疑間をも
ちました。せまいところに強い関心が向かうという特性が、のちに「万有
引力」というものを発見させるのです。私たちは偉大な科学者のようには
なれませんね。アインシュタインだって、小学校のときに二度も落第の経
験があります。できないことはできなかったのですが、できることに対し
ては、集中力がありましたから「相対性理論」で世界的な物理学者になっ
たわけです。
 このように四人のエピソードを紹介しながら、アスペルガー症候群の人
の特性を小学生にわかるように説明していきます。小学生たちはビデオテ
ープを見ながら、アスペルガー症候群は発達が遅れた人のことをいうので
はなく、発達が不均衡でバランスが悪いこと、自分たちとは発達の仕方が
異なっていて、どのように自分たちとちがうのかということを学んでいく
わけです。
 ノースカロライナの学校は、いま、お母さんが家で、子どもと一対一で
やっているような教育を学校でもやっています。それを特別支援学級でや
るほうがいい子どもにはそこでやりますし、一部普通学級と行き来しなが
らやればいい科目はそうします。けれど、最初はどんなに知的能力の高い
子どもでも、自閉症の学校から教育をスタートします。それは自閉症の子
どもに、教室で苦労させないためです。
 そして、本人の能力と興味がしっかりあるものだけは、普通の学校でみ
んなと一緒に学びますが、苦労するような科目は一緒に入れてはだめで
す。年齢が大きくなるにつれて、普通学級での勉強の時間が、もちろんふ
えていきますが、この子たちを失敗させて傷つけないように、もっている
能力がしっかり発揮できるようにしてあげています
 また、ノースカロライナ州の先生は、多くの場合、小学校低学年の生徒
には、休み時間のすごし方から指導しています。この子はどういうレベル
にあり、どんな教材を与え、何を教えるとできるのかなどは、もうわかっ
ているわけですから、授業の指導は簡単ですけれど、休み時間はそうは
いかないわけです。自閉症スペクトラムの子どもたちは、自由に遊ぶ時間
はひどく不安になります。何をしていいかわからない時間だからです。だ
から、いろいろな休み時間のすごし方を選んで、どれをやりますというこ
とを、はっきり事前に決めさせてあげて行動すると、この子たちはとても
落ち着きます
 自閉症スペクトラムのもっている力を、可能なかぎり発揮できるように
なった青年たちは、たとえば、図書館の職員になったら、ほかの人よりす
ぐれた能力を発揮します。本の背表紙の番号を見れば、この本はどこに収
納されていたということは、ほかの職員には、とうてい覚えられないほど
よく覚えます。ノースカロライナの図書館では、職員として高機能自閉症
の人はもっともすぐれた職員だといわれています。利用者に対してお世辞
はいえませんけれど、図書館でお世辞はいわなくていいし、よけいな口を
きかないほうがいいところですから、適役であります。
 ノースカロライナ州の、自閉症児理解のための取り組みの一つの紹介です。日本でもぜひ製作して普及させてほしいですね。続きます。よろしくお願いします。

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