育(そだてる) 79
6 五ケ月の胎児はお母さんの声に反応する
-子育ては胎児教育から始まる
京都大学名誉教授 大島 清
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* 胎児は病気になっても、外科治療に耐える力をもっている
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これまでお話ししてきたさまざまな有害物質が原因となって胎児に障害が現われたり、そのほかの原因で病気になったりした場合、いままでは手をこまねいているしかありませんでした。
しかし最近では、胎児診断がめざましい勢いで進歩しており、お腹にいるあいだに異常が発見されるケースも多くなってきました。たとえば、胎児の細胞や胎盤のある部分の組織を採って、染色体や遺伝子、酵素などが正常かどうかを調べられますし、超音波診断法によって胎児の手足の異常を見つけることも可能です。
一方で、こうした胎児診断の進歩は、胎児に先天異常が見つかったとき、中絶すべきか否かという新たな問題を生み出しています。生命の尊厳という倫理的な問題もからまって、社会的な議論もまき起こりつつあるのも事実です。
胎児治療のうちでもっともポピュラーなのは、胎児の胸や腹にたまった水(胎児水腫)を注射針で抜く治療です。
日本では昭和六十一年に九州大学医学部ではじめて成功しました。また、低たんぱく症の胎児にアルブミンというたんぱく質の一種を注射したり、貧血の胎児に輸血したりといった治療も行なわれています。
さらに、最近、大阪の国立循環器病センターは、外科手術をともなう胎児治療に日本ではじめて成功しました。
尿路が詰まり、ぼうこうに尿がたまってしまった妊娠二十一週目の胎児に、ポリプロピレン製の人工尿路を取りつけるという手術です。こういった外科手術をともなう胎児治療は、欧米では数十例の成功例があり、今後日本でも応用範囲が広がっていく見通しです。
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医学の進歩は目覚ましいですね。胎児に外科手術ができるなんて、私には信じられない思いです。一方で医学の進歩は胎児の先天異常も発見できるようになったことで、様々な倫理的な問題も提起しているということです。老いを迎え、寝たきり問題や認知症の問題が我がことになった身にとっては、尊厳死の問題も避けて通れない気がします。私にも寝たきりになりチューブにつながれ何年間も植物状態の間入院していた叔父や叔母がおりました。本人自身も辛かったことでしょうが、介護にあたる家族の大変さも他人ごとではありませんでした。これもある意味では医学が進歩した結果です。
生命の尊厳について、もっともっと社会的な議論がまき起こるべきだと私は思っています。
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2022-05-12 │ 育(そだてる) │ コメント : 0 │ トラックバック : 0 │ Edit