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育(そだてる) 83

7 お腹の赤ちゃんとおしゃべりしていますか
      -“胎談”のコミュニケーションで赤ちゃんはどう変わるか
                                                                               大阪胎教センター主宰 森本義晴
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 * 胎談はお腹の赤ちゃんと話すだけ
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「胎談」という言葉をはじめて耳にしたお母さんもきっと多いにちがいありません。胎談とはわかりやすくいえば、お腹の赤ちゃんと対話することです
 お腹の赤ちゃんの話し相手は、お父さんやお母さん、そして赤ちゃんの誕生を心待ちにしている周囲の人たちですお腹に話しかけると、お腹の赤ちゃんもちゃんと応えてくれます
 この胎談が赤ちゃんにどのような効果をもたらすか私の指導する胎教教室での実例やお母さん方の体験などを交えて説明していきたいと思います。

 胎談の効果で、まっさきに指摘されていることは、お腹の赤ちゃんの脳への刺激です。「赤ちゃんの脳」という言葉を聞いただけで、難しそうと尻ごみする人もいるようですが、胎談にはむずかしい知識やテクニックは必要ありません。お腹の赤ちゃんとただ話をするだけです。
 だからといって、胎児の成長過程についてまったく知識がなくては効果的な胎談は行なえません。お母さんやお父さんたちがお腹の赤ちゃんについての知識を持つことはたいせつですが、とくに脳という人間最大の器官について関心を持っていただきたいと思います。

 人間の脳については、「人類早産説」という興味深い論があります。それは「人は大きな脳ゆえに、身体が完成するまで出産が遅れると、産道からの脱出は不可能になる。そのため脳がまだ未熟なうちに早産として生まれる。だから生まれてすぐには歩けないし、母親のオッパイさえも探すことができない」という主張です。
 この説でも指摘しているように、他の動物に比べるとずばぬけて大きいのが人間の脳です。この人間の脳には細胞がぎっしり詰まっていますが、人間の脳細胞(神経細胞)のほとんどは、このお腹の中にいるときに形成されますそれを考えると、胎内での発育が赤ちゃんにとっていかに重要であるかがわかります

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 今日から、森本義晴先生の「胎談」の効果についてのお話です。私は森本先生については全く存じ上げませんでした。「胎談」という言葉も初めて耳にしました。この本の著者一覧には「日本初の、心理学に基づいた胎教プログラムを実施。また育児相談のホームベージも開設。(http://www.fetus.org/) 出典『おなかの赤ちゃんとおしゃべりしていますか』」とあるだけです。出典の『おなかの赤ちゃんとおしゃべりしていますか』を調べていたら、『おなかの赤ちゃんとおしゃべりしよう』という著書がPHP出版から刊行されており前著の改訂版ではないかと思われますが、著者については「1951年生まれ。関西医科大学卒業。同大学院修了。森本病院院長、森本記念健診クリニック院長を経て、現在、IVF大阪クリニック院長。専門は生殖超微形態学。出生前心理学。89年大阪市に心理学を基本とした本格的胎教プログラムを指導する大阪胎教センターを設立。現在までに6000人以上の卒業生を送り出している。また、出生前心理学の立場から胎児の学習能力、胎内記憶の問題に取り組んでいる。NHK、テレビ朝日など多数のテレビ番組にも出演。
主な著書に『おなかの赤ちゃんとおしゃべりしてますか』『赤ちゃんができた』(以上、ごま書房)、『ドクター森本の不妊は家庭で治せる』(ゴマブックス)、『ママ教えて』『さよなら不妊症』(以上、ビクターブックス)、『赤ちゃんを抱きしめたい』(新風舎)などがある」という記事を見つけました。胎教センターでの実績は間違いないようです。まずは読み進めたいと思います。

育(そだてる) 82

6 五ケ月の胎児はお母さんの声に反応する
      -子育ては胎児教育から始まる
                                                                               京都大学名誉教授 大島 清
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* ″五感を感じる能力〃で決まる胎児の″脳力〃
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 胎児期の脳の成長がいかにすばらしいか、そのためにも、胎児期の一日一日がいかにたいせつかということは、これまでの話でおわかりいただけたと思います
 とはいっても、もちろん、胎児は神経細胞をつくっているだけではありません。脳のいろいろな働き、機能も発達させています。″脳の働き″というと、ふつうの人がまず考えるのは、考えたり、記憶したり、言葉を話したりするというように、いわゆる知能と結びついた能力でしょう。″脳の能力″としては、こうした知的な思考力などは、もちろんだいじなことで、私たち人間は、「考える動物」だとよく言われます。 

 しかし、胎児のうちは、「考える」というような高等感覚はまだできません。さまざまな動物の場合と同じように、生きていくうえで最低限必要な能力、つまり、動くなどのこと、原始的な運動や、聞く、皮膚で感じるなどの、いわゆる五感の中でも原始的な感覚から発達しはじめます。
 五感というのは、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、皮膚で感じるという五つの感覚です。この五感は、生きていくうえで最低限必要な能力であると同時に、じつは、人間の脳の知的活動の基礎にもなるものです。また、″五感を感じる能力″は、脳の働きを発達させるためにも、重要な役割を果たしています。
 言いかえれば、胎児は、″五感を感じる能力″を育てることによって、自分の脳を発達させているのです。
 ただし、この五感のすべてが胎児のうちに完成するわけではありません
 とくに、嗅覚、味覚、視覚の三つは、胎児のうちに、ある程度は発達しますが、胎児のうちは未成熟のままで、体外に出てからの成長の中で完成していきます。とくに視覚については、完成するのが七歳と、他の感覚にくらべても、ひじょうに遅くなっています
 というのも、視覚は五感の中でも一番高等な感覚で、見るだけではなく、遠近、立体、濃淡、色覚など、複雑な働きを含むからです。

 人間も動物、脳あってこそ動くことのできる生物です。まえにもお話ししたように、はじめはミミズのような反射的な動きから、自ら行なう指しゃぶりのような高等な運動をするまでに発達していきます。しかし、ほんとうにすぐれた、こまやかな動きは、もちろん生まれてから発達し続けるのです。

 そして、聴覚や皮膚感覚は、胎児のうちにほぼ完成します。五感のうち、もっとも早く発達するのは皮膚感覚で、二、四カ月から、その一部ができ始めます。この皮膚感覚が胎児の成長のために重要な役割をすることは、すでにお話ししたとおりです。
 母親の体内にいるときから、指しゃぶりをおぼえたり、母親のお腹を足で蹴ったりするのも、皮膚感覚の発達のおかげです
 また、この皮膚感覚は、生まれた直後から、母親とのスキンシップなどでたいせつな役割を発揮します。このスキンシップによって、生まれてからの赤ちゃんは心の安定を得、スクスクと成長していくわけですが、そのために皮膚感覚が胎児のうちから発達していることがいかにたいせつなことか、いくら強調してもしすぎることはないでしょう。

 皮膚感覚とならんで早く発達するのは、聴覚です。五カ月ぐらいになると、母親の声や外の音を聞くことができるようになるのです。この聴覚もまた、胎児の成長に大きな影響を及ぼすことは、まえにも書いたとおりです

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 大島先生の胎児教育についてのお話は今回で終了です。まだまだ教えていただきたいことがたくさんあるはずですが、それは大島先生の著書を読むことにしようと思います。
 妊娠、出産という女性にしかできない大切で大変な営みについて、男である私には想像すらできない大変さがあることでしょう。しかもその時期には、胎児の順調な成長、発達のために、注意しなければならないことも山積しています。しかし、そのご苦労があればこそ、胎児は素晴らしい能力を身に着けて生まれてきます。お母さんたちが、安心して妊娠の期間を過ごし無事出産が迎えられるような世の中や、支援のしくみを社会全体で考えていく必要性を改めて実感しながら、この章を終わりたいと思います。
 明日からは、森本義晴先生の胎談という、私は今まで聞いたことなないお話です。楽しみに読んでまいりたいと思います。

育(そだてる) 81

6 五ケ月の胎児はお母さんの声に反応する
      -子育ては胎児教育から始まる
                                                                               京都大学名誉教授 大島 清
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 * 胎児は、毎日五、六000万個の脳細胞をつくっている
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 さて、話を胎児の脳に戻すと、胎児はたった一個の細胞から生命をスタートさせて、母親の体内にいる二六六日のあいだに、 一五〇億個の脳の神経細胞をつくります。単純に計算しても、一日平均五〇〇〇万~六〇〇〇万個の神経細胞を″生産″していることになります。
 これはたいへんな″生産スピード″と言わざるをえません。とくに、人間の脳の神経細胞の数は、生まれてからはふえないことを考えると、胎児だけがもつ、すばらしい″脳の生産能力″といえるでしょう。ですから、胎児期の初期のころ、胎児の脳の成長を妨げるようなことをしないような注意が必要なことはもちろんなのですが、これは初期のころだけでなく、胎児期全体を通じていえることということはおわかりいただけるでしょう。一五〇億個の神経細胞をつくるまでの毎日毎日が、たいへん重要なのです

 もちろん、脳の発達は、胎児のときだけにとどまるわけではありません。出産によって母親の体内から出たあとも、脳は成長していきます。
 人間の脳の成長を、脳の重さで見ていくと、受胎したときに〇グラムだった脳の重さは、徐々に増えていき、出産時には四〇〇グラムにまでなります。
 そして出産後は、 一歳までに、倍の八〇〇グラムまで重くなり、この重さは体重の約一〇パーセントほどにもなるのです。さらに七、八歳で大人の重さの九〇パーセントにまで達し、その後ゆっくり成長を続け、男性で二〇歳、女性で一七、八歳で一二〇〇~一四〇〇グラムの脳が完成します
 この脳の成長をグラフで描くと、受胎から出産後一歳までは、急勾配の線となって、ほぼ一直線に成長していきます。その後、この成長のスピードを示す線は、傾きがゆるやかになり、さらに七、八歳をすぎるともっとゆるやかになります。

 このようにお話しすると、神経細胞は胎児のうちにすべてつくられ、生まれてからは数がふえないというのに、なぜ、このように生まれてからも脳の重さがふえつづけ、しかも大人になると出産のときの三倍以上の重さをもつようになるのか、と不思議に思う人もいるかもしれません。
 これはじつは、生まれてからは、脳の神経細胞の数そのものはふえませんが、一つには、先にもすこしふれた脳の中のグリア細胞がふえるからです。
 また、神経細胞自体も、他の神経細胞との“結びつき”のために、たくさんのトゲのようなものを伸ばしたりして、重さがふえるということもあります。

 いずれにしても、一五〇億個の神経細胞が胎児のうちに順調につくられることが、生まれてからのためにも、たいへん重要なことは言うまでもありません。
 くどいようですが、この胎児の″脳をつくる能力″のすばらしさを知ったうえで、その能力を妨げないようにすることが、いかに胎児教育では重要かということをくり返しておきます

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 大島先生が何度もくりかえしておられますが、胎児の脳をつくる能力の驚くべき素晴らしさと、それだけにその成長過程で悪影響を与えることだけは何とか避けるような日常生活でのこころくばりや、そのために胎児の成長発達についての知識を身に着けることの大切さなど、よく理解できた気がします。
大島先生のおっしゃる胎児教育はある意味では決して難しい大変なものなどではなく、胎児に対するお母さんの愛情と気配り、そして周囲の理解と協力という、人として当たり前の心構えや生き方を指しているにだと私は理解しました。
 愛情につつまれ、その出産が待たれ祝福される赤ちゃんが当たり前になる世の中になって欲しいと願います。
 週が開け五月もはや後半です。今週もお出かけいただければ嬉しい限りです。よろしくお願いいたします。

育(そだてる) 80

6 五ケ月の胎児はお母さんの声に反応する
      -子育ては胎児教育から始まる
                                                                               京都大学名誉教授 大島 清
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* 胎児の脳細胞は、生まれてからは増えない
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 胎児のもつさまざまな能力についてお話ししてきましたが、どんな能力であっても、それをつかさどっているのが脳だということは、誰でもご存じでしょう。
 ひとくちに、人間の脳細胞の数は約一五〇億個といわれています。これは正確にいえば、″大脳皮質の神経細胞の数は約一五〇億個″ということです。
 脳には、大脳のほかに小脳などもあることは言うまでもありません。ですから、脳全体の神経細胞の数は一五〇億個よりもはるかに多くなりますが、なんといっても、他の動物とくらべると、圧倒的に人間が多いのです。
 また、脳には、神経細胞のほぼ五倍、つまり八〇〇億個にものぼる″グリア細胞″というものがあります。このグリア細胞も、脳の中で重要な役割を果たしてくれていますが、猛烈に増えていくのは生まれてからです。

 しかし、脳の主役は、なんといっても神経細胞のほうです。ふつう″脳細胞″と言ったときは、この神経細胞をさします。
 神経細胞の数について、なぜこのようなことをお話ししたかというと、じつは、この一五〇億個は胎児のうちにすべてつくられてしまうからです。生まれてからは、新しいものがつくられて数がふえるということはありません。また、こうした神経細胞が何らかの原因で死んでしまっても、それに代わるものが再生されるということもありません
 これが体の他の部分ですと、人が成長するにしたがって、新しい細胞がどんどんつくられていきますし、古くなった細胞が死ねば、それに代わる新しいものがつくられていきます。しかし、こと脳にかぎってはまったく違っていて、胎児のうちにつくられた神経細胞は、生まれてからは、その数がふえるということはないわけです。

 こうしたことは、すでにご存じの人も多いでしょうが、胎児教育を考えるうえで、これほど重要なことはないと思いますので、あらためて強調しておきたいのです。
 つまり、胎児教育とは、胎児期の脳の発達が順調に行なわれるように注意し、胎児の脳の発達を妨げるようなことを防ぐのが、もっともだいじなことだといっても、けっして過言ではないでしょう。
 たとえば、女性であれば、健康診断などのⅹ線検査のまえに、医者から妊娠の可能性について、聞かれることにお気づきだと思います。女性のほうでも、妊娠している可能性があるなら✕線はもちろんのこと、風邪薬や頭痛薬などの薬を飲んではいけないことをご存じの方は多いでしょう。
 なぜ、✕線検査や薬を飲むことがいけないのでしょうか。答えは簡単です。妊娠初期、 つまり胎児が成長する初期の段階で、✕線や薬の影響を受けると、胎児の細胞が破壊されたり、損傷を受けて、以後の成長がスムーズにいかなかったり、狂いを生してくるからです。

 ご存じのように、胎児の生命は、母親の卵子と父親の精子が合体してできた受精卵という、たった一つの細胞から始まります。この受精卵が分裂して二つになり、さらに分裂して四つになるというように、細胞の数がどんどんふえていくと同時に、脳のもとになる細胞、内臓のもとになる細胞というぐあいに、細胞の形や働きも分かれていくことで、胎児も成長していくわけです。
 そして、生まれる直前には、大脳皮質の神経細胞の数だけでも、約一五〇億個になります。
 受精から出産まで、二六六日のあいだに、このような成長をとげるのですから、胎児の脳の成長のスピードがいかに早いかということがおわかりいただけるでしょう。それとともに、このように、たった一個の受精卵という細胞から、細胞分裂をくり返しながら胎児は成長していくだけに、胎児の細胞に悪影響を及ぼすことがあれば、とくにそれが早い時期ほど、胎児には致命的なことになりかねないということがわかると思います。

 とくに胎児の脳についていえば、初期の段階で何かあれば、生命の危機すら招きかねません。また、大人の脳は、二十歳を過ぎると、毎日約一〇万個ずつ減っていくとよくいわれます。 一〇万個という数をみると、それだけでふつうの人は、「そんなに数が減ってだいしょうぶか。バカになるのではないか」と心配しますが、それだけで″バカ″になったりすることはありません。それも、胎児のうちに一五〇億個という膨大な数の神経細胞をつくっているからで、毎日一〇万個ずつ神経細胞が減っていっても、脳そのものの働きにはたいした影響を及ぼさないからです。
 しかし、この一五〇億個の神経細胞が胎児のうちに順調に発達しなかったり、数が大幅に減ったりすれば、これは大問題です。

 ふつう女性が妊娠に気づくのは、生理が順調な人でも、生理の遅れを気にして、しばらくたってからです。「もしかしたら」と医師の診断を受け、妊娠を告げられたときは、すでに妊娠三カ月日にはいっていることがほとんどです。つまり、胎児の成長にとって重要なニカ月間というのは、母親自身が気づかないまま過ぎてしまうことが多いのですだからこそ、✕線検査を受けるまえに、妊娠の可能性についてたずねられるわけです

 ですから、胎児教育について、私の理想を言わせてもらえば、妊娠に気づくまえから、母親は胎児教育を始めてほしい、ということです
 言いかえれば、妊娠の可能性のある女性はすべて、胎児が何を求め、胎児の成長を妨げるものは何かということを知っておいていただきたいのです。

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 今日のお話は、胎児の脳の成長のスピードの驚くべき速さについてと、それだけに妊娠初期に脳の成長の妨げになるような事態を防ぐことの重要性や大切さについての確認です。特に最後の段落に述べられている大島先生の願いはまさにそのとおりだと思います。妊娠の可能性のある女性はすべて、胎児が何を求め、胎児の成長を妨げるものは何かということを知っておけるようになるような対策を、国をあげて取り組んで欲しいと願いたいですね。あるいは、すでに行われているようなら実効が上がるような工夫をして欲しいですね。
 ゴールデンウィークが終わって最初の週末です。天気予報では、地域によっては大雨の予報も出ているようです。無事に過ごせますよう願っています。今週もお立ち寄りありがとうございます。週明けもお待ちしています。

育(そだてる) 79

6 五ケ月の胎児はお母さんの声に反応する
      -子育ては胎児教育から始まる
                                                                               京都大学名誉教授 大島 清
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 * 胎児は病気になっても、外科治療に耐える力をもっている
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 これまでお話ししてきたさまざまな有害物質が原因となって胎児に障害が現われたり、そのほかの原因で病気になったりした場合、いままでは手をこまねいているしかありませんでした。
 しかし最近では、胎児診断がめざましい勢いで進歩しており、お腹にいるあいだに異常が発見されるケースも多くなってきました。たとえば、胎児の細胞や胎盤のある部分の組織を採って、染色体や遺伝子、酵素などが正常かどうかを調べられますし、超音波診断法によって胎児の手足の異常を見つけることも可能です。

 一方で、こうした胎児診断の進歩は、胎児に先天異常が見つかったとき、中絶すべきか否かという新たな問題を生み出しています。生命の尊厳という倫理的な問題もからまって、社会的な議論もまき起こりつつあるのも事実です

 胎児治療のうちでもっともポピュラーなのは、胎児の胸や腹にたまった水(胎児水腫)を注射針で抜く治療です
 日本では昭和六十一年に九州大学医学部ではじめて成功しました。また、低たんぱく症の胎児にアルブミンというたんぱく質の一種を注射したり、貧血の胎児に輸血したりといった治療も行なわれています
 さらに、最近、大阪の国立循環器病センターは、外科手術をともなう胎児治療に日本ではじめて成功しました
 尿路が詰まり、ぼうこうに尿がたまってしまった妊娠二十一週目の胎児に、ポリプロピレン製の人工尿路を取りつけるという手術です。こういった外科手術をともなう胎児治療は、欧米では数十例の成功例があり、今後日本でも応用範囲が広がっていく見通しです

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 医学の進歩は目覚ましいですね。胎児に外科手術ができるなんて、私には信じられない思いです。一方で医学の進歩は胎児の先天異常も発見できるようになったことで、様々な倫理的な問題も提起しているということです。老いを迎え、寝たきり問題や認知症の問題が我がことになった身にとっては、尊厳死の問題も避けて通れない気がします。私にも寝たきりになりチューブにつながれ何年間も植物状態の間入院していた叔父や叔母がおりました。本人自身も辛かったことでしょうが、介護にあたる家族の大変さも他人ごとではありませんでした。これもある意味では医学が進歩した結果です。
 生命の尊厳について、もっともっと社会的な議論がまき起こるべきだと私は思っています。